発表(2)

発表を待つまでの精神状態というのは、異常なものがある。
もたない。
と思う。
試験前は試験前で、体調管理で食事や風邪や腹痛…などに過敏になった。発表前というのは…なんかもう、蛇の生殺し
というのだろうか…?発表前(現在)と発表後(未来)
のバランスが取れなくなる。
合格か不合格
かで、天国(白)と地獄(黒)の落差があるとは思わないが、(思わないようにしている)
白と灰色くらいの落差はある。
発表の前々日、私は礼拝の帰りに寿司屋に行った。

回転寿司でない寿司屋に一人で行くなど、生まれて初めてである。雑誌で見つけて、そのうち行こうと前々から思っていたのだが、
不合格だったら、当分、行く気にもならないよね。
という思いから、行ったのである。
また、その日の夕食には、
ステーキ

を食べた。これも、前述同様、
不合格だったら、当分、食べないよね。
という心理が働いた。
何とも…変だが、ちょっと自分でもおかしい。(ので特記する)
前日は、どう過ごしたのか、何も覚えていない。(いつも通りを心がけた)ただ、遠い昔、こうして、自分の高校受験、大学受験を乗り越えたのだと思うと、
よくやれたなぁ…(やるしかないのだが)受験に対する知識のない私は、(必要なことは、礼拝で受験生もつ母親に教わった)発表が掲示板でない
一人一人に角封筒が手渡され、その中に合否が記されているらしい
と、発表前々日の礼拝で知ったのである。
発表は午前10時から12時。
受かるにしろ落ちるにしろ、世紀の瞬間に立ち合うべく、私は次女と出発した。
朝から、意識の上に膜が張ったような感覚である。長女を送り出してから、次女担任から電話があった。
「今日はどうされますか?」
「一緒に発表に行ってから、登校させます」
公立中学だと登校してから、それぞれ発表校に向かうらしい。
なるべく早く登校するように言われ、次女と外食するつもりだったが、次女の弁当を作り始める。担任教諭も、気が気ではないのかもしれない。「あなたの道を主にゆだねよ。主に信頼せよ。主が成し遂げてくださる」
詩篇37‐5)
バスの中で、この御言葉を繰り返していた。(食べていた)
バスを降りて、見慣れた風景を行き過ぎる。
願書提出に付き添い、入学試験に付き添い、合格発表にまで…ストーカー
のようについて回ったが、これが最後になるかもしれない…。正面入り口の、
「合格発表」
の張り紙を見た時は、このシーンが脳裏に焼きついた。
ここを出た時、自分はどんな顔をしているのだろう。
意識に蓋をする。
受付窓口が横に開かれ、受験票をもった次女が列に並ぶ。精神的に幼い彼女は、朝から歌を歌っていて、特に緊張する気配もない。ただ、受験の面接の最後に、
「感極まって泣いた」
と次女担任から知らされた。
設問に答えられなかったというのではなく、「感極まって」(という言い回しをしたらしい)泣いたらしい。
私が聞いても「忘れた」「覚えてない」ととぼけるのだが…。彼女は彼女なりに悩み、闘い、葛藤があったのだろう。封筒を受け取った次女、「わぁ」という声を聞いたような気がした。私を見て……ヽ(^o^)丿

「合格したの?」
「だって」
と、「合否結果通知書」なるものを見せられた。
「合格」
現実感はないものの、抱き合う。それから、合格者は3階で手続き、不合格者は「お帰り」となる。娘を待つ間、私は「世紀の瞬間」を観察した。
保護者付き添いは誰もいない。15歳の少年、少女が封筒を開き、「合否」を確認する。
無表情に出口へと向かう彼らの心境は…?手続きを終えた次女が戻って来る。
感謝………。
窓口に並ぶ先生方にお辞儀した。これからの娘の高校生活を、よろしくお願い致します。
晴れがましさの中で、感謝した。