神が動く(2)

前回のあらすじ
恩師、桂千穂氏(80)に救われてほしい(イエス様を受け入れ、死後は天国へ迎えられる)と願う三輪は、「先生、クリスチャンになりませんか?」と呼びかけるも、すげない返事しかもらえない。「祈っていると、主は必ず答えてくださる」という教えから、三輪は毎日、「桂先生が救われますように…」と祈るようになった。と…礼拝で知り合った佃(つくだ)姉妹が一年ぶりに家庭集会を開くと言う。確かめてみると、佃家は桂家のごく近所。そして…桂氏は佃家をよく知っていることが判明した。

こんな、偶然があるだろうか。
陸の孤島ではない。東京の真ん中で、「ご近所」なんてことは……奇跡に近い。
「あの、私の所属する教会の家庭集会が佃家であるのですが、先生、一緒に…」
「冗談じゃない!僕はキリスト教なんて嫌いですからね|`Д´)ノ」
ネオキワル〜 ~~ヽ(▼o▼) オイッス〜
まぁ、あらかた想定していた反応ではあった。
「新しい仕事も入って、僕は忙しいんです」
大した剣幕である。私は、おずおずと言った。
「家庭集会は2時からなんですが…それが終わってから、先生のお宅にお寄りしてもよろしいですか?」
先生を怒らせたかと思ったが、先生、在宅でOKとのこと。
なんだ、やっぱり寂しいんじゃない(^ー^)ノ
佃家での家庭集会では、思いがけなく「舞台」の宣伝をすることとなった。
その帰り、ピーター宅を訪問する。
私はこの日、キリスト集会から出している3冊の本を持参していた。大・中・小…。分厚い・並・薄い…の3冊で、イエス様への信仰以外に救いの道はない、と説く伝道の書である。今までは、何だか渡せずにいた。しかし、この日は、この中の一冊でも先生に手に取って読んで欲しかった。
「僕は結核で暇だった時、田園調布の教会に通って、聖書を言語で読みましたけどね。何も残っていませんね(*`Д´)φ」
と、これは何度も聞いた。
「今、読み直せば新たな出会いがあるかもしれませんよ」
先生、首を振ってから、
「石堂さんはクリスチャンなんですか?」
私が石堂氏と親しいことを先生は知っている。同じシナリオ作家教会の理事として、石堂淑朗氏のことは意識するらしい。教養人の石堂氏がキリストを受け入れたなら、ちょっとは考えてもいいかな?というところか。
「クリスチャンではないですが、『聖書』については認めてらっしゃいます。私にも、『クリスチャンになって聖書に関わったんだから、聖書を読んでいればいい』と…」
「○○○の英語版でしか聖書を読んだ気がしない」と言い、私にも、それを勧める。「日本語訳は良くないよ」…"(-""- )"その上、「ドイツ語で読めばいいんだけどね。ルターの世界だから」
――そこまで聖書に心酔したなら、クリスチャンになってもいいと思うのだが、
「宗教は嫌い」
この点、桂先生も石堂氏も同じだ。
イエス・キリストキリスト教とは全く関係がない」
と、キリスト集会の責任者、ゴットホルド・ベック氏は言われた。
「宗教は人間が作ったもの。聖書以外のことまで教えてる」
その通りだと思う。
「宗教」に対する偏見でクリスチャンを拒絶してほしくないのだが…。
説得するのは難しい。
ピーター先生、仕事もあるし、映画の試写会にもマメに行かれる。98歳まで矍鑠(かくしゃく)として映画評論の仕事をされていた双葉十三郎氏を尊敬し、憧れておられるが…。周りの人間が櫛(くし)の歯を削るように亡くなる現実は、如何ともしがたいご様子だ。無理もない。
「だって先生、この世に救いなんてないじゃないですか」
「生きてても楽しいことないですね」
「じゃ、もう、ダメ元でクリスチャンになってもいいじゃないですか?」
ダメ元とは…。
ティース(/ ̄ー+ ̄(/ ̄ー+ ̄)キラリ
そして先生、3冊並んだ本のうち、
仕方なく、一番薄いのを手に取る
かと思ったら…
3冊全部、取ってしまったやんけ。
"+;・ο。.・;+:+.。ο・;+*:゜・☆ヾ(・ェ・。`U 了└|力""├♪"