「がん」という冒険(68)
さて、10月に入ったかと思ったら、もうその3分の1が過ぎてしまった。2022年9月は私にとって特別な月となった。
8月22日にスタートした放射線治療が9月30日で無事終了したのだが、放射線治療を継続しながら実に様々なことがあったのである。主なものをあげれば、
●お見舞いに行った姉妹の家でネズミが出現した。
●娘達の20歳の誕生日で江の島に行った。
●娘達の成人式の前撮りの準備。
●前撮り本番。
ざっとこんなところか?
わけても、前撮り準備は骨が折れた。お金も時間もかかる。そもそも前撮りというのは、
記念写真を記念日よりも前の日程であらかじめ撮影しておくこと。
今や成人式の前撮りというのは、レンタルパックが主流を占めている。つまり、振袖のレンタル~着付け・髪セット~撮影・記念アルバムまでをセットで請け負うのである。
これは便利である。しかし、
我が家の場合は、レンタルではなく自前の振袖×2(双子)である。なぜ自前かといえば、
趣味で染め物をやってる義母が、娘達の振袖を染めてくれたから。
(*'▽')(*^^)v( ^^) _旦~~(^0_0^)(^O^)/(^。^)y-.。o○
しかし、振袖を着るのに必要なのは振袖だけではない。
着物というのは、下着類(襦袢(じゅばん)や裾除け(すそよけ))に帯、帯揚げ、帯締め、着付けに要する帯枕に帯板……足袋(たび)に草履がなくてはどうしようもない。写真撮影となればバッグもあった方がよい。
なんとも面倒なのである。髪だって、振袖となれば御大層な髪飾りなるものを要する。
そんなわけで、娘達の草履やバッグ、髪飾り…集めに奔走したのである。
並の娘なら、自分達で通販でも探すのだろうが、うちの娘達は振袖にも成人式にもさして興味なく、その歩みは、
牛のようにのろい。
前撮りは9月25日と決まっていたから、私が掛け声をかけてコマを進めるしかなかった。
(-_-)/~~~ピシー!ピシー!\(゜ロ\)(/ロ゜)/(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
オールインワンのレンタルセットとなれば、当日、成人式を迎える本人が手ぶらで店に行けばいいだけのことだろう。
しかし自前となれば、着付けに髪をやってもらう美容室に写真館も予約しなければならない。とくに、美容室では着付けに要する着物類一切を期日指定で事前に持ち込まねばならなかった。トランク二台に着物類を詰め込んで、9月13日の午前10時半、私と義母、娘達の4人で美容室に赴(おもむ)いたわけである。
とはいえ、義母と娘達の着物類をトランクに詰め込む作業はいささかのもめ事もなく、(義母は私のがんについては何も知らない)美容室にトランクを持ち込んだ当日には、着付け師によって娘達に振袖や帯、小物類を合わせたり…などが行われ、なかなかに風情のあるものだった。
尚、4月から寮住まいになった娘βが肥満によって、用意してあった帯が寸足らずとなり、着付けの先生から帯をお借りする事態ともなった。
そうして25日の本番、早起きして美容室に向かう。三連休(17・18・19も台風)を狙い撃ちしたかのような台風…のはずが、
25日は晴れ渡り…
信じられなかった。義母は大騒ぎしてハイヤーを頼んでいた。
それから、着付け~撮影~食事と全くスムーズに進行した。早起きもあり、疲れ果てた娘達は撮影後、振袖のまま椅子で寝ていた。よだれを垂らさないか心配だったが、どうにか守られた。
義母と娘達、夫と私の家族写真も撮り終えた。
全員笑顔…の写真は、誠に平和で幸せそうである。しかし、私は知っている。
この写真の裏側には、様々な思い、悲しみや苦しみ、憎しみ(?)…が渦巻いていることを…。
しかし、それでいいじゃないか、と思う。一人一人、重荷を背負い、家族だから、みんな愛し合い、優しくいたわり合って、仲良く暮らしているわけじゃない。そんなはずがない。
でも、だからこそ、こうして笑顔で幸せそうに写る写真が尊く、貴重に思える。これも…偽りではなく真実なのだ。