「がん」という冒険(67)
「髪切ったの?」
コロナ以前からだから、会うのは3年ぶり近くになるのだろうか?顔も可愛いが声も可愛い★姉妹に問われ、
「ウィッグ」
と答える。
「ああ。可愛い」
★姉妹はがんのことを知らないから、私が抗がん剤治療でハゲになったためのウィッグとは想像もしない。ちなみに、ウィッグをつけるようになって「可愛い」と言われるようになったのである(^。^)y
放射線治療終了が秒読み段階となった28日、3人の姉妹とカフェで会った。
◆姉妹や●姉妹は祈り会で顔を合わせるが、★姉妹は別の祈り会なので礼拝がzoomになってからは会っていなかった。
私より年上の★姉妹は、大学生の一人息子が不登校になったショックで全身の毛が抜けたという経験がある。抗がん剤治療で医師からハゲを宣告された私は、★姉妹に相談の電話をかけようかと思ったことがあった。
ランチタイムまでしばらくあり、私達は店外で時間をつぶすことになったが、適当なベンチもなく立ち話。そうして私は、
「実は私、去年の秋に乳がんになって、抗がん剤治療でハゲになって、それでウィッグするようになったの」
「え…………………………………………………………………」
なかなかすごい立ち話である。
◆姉妹も●姉妹も私のがんは知っているが、私が「他言は無用、私の口から言いたいので」と口止めし、それを守ってくれた。
「抗がん剤治療が終わって6月に手術も終わって、今、放射線治療に通ってます」
相槌も打てず、★姉妹は絶句したまま棒立ちである。教職にある●姉妹は祈り会にもめったに出られない。夏休みになって祈り会に出られた時にカミングアウトしたのである。
「私も最近教えられて。もう、びっくりして」
沈着冷静な●姉妹のあの顔は、「『鳩が豆鉄砲を食らったような顔』というのは、こういう顔をいうのだろう」と突然に思った。
貞淑な妻の◆姉妹は祈り会の常連ではあるが、
「去年、ウィッグしてきた時も、ああ、おしゃれでやってるんだなぁ~って思ってた。そしたら、5月の連休も過ぎた頃、『実は~これから入院します』って…」
「……………………………(*^^)v………………………………………」
「祈り会だと、祈りの課題でがんの人の話がいっぱい出るでしょ?ステージがどうとか転移とか…再発とか末期とか亡くなったとか…。とても『がんになりました』とは言えませんよね?」
「………………………………(。-`ω-)………………………………………」
よく思ったものだ。私ががんだと言えば、この祈り会はどうなるのだろう?
2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなるといわれる時代、祈り会でがんの話題は避けられない。私は平然としていればいいが、姉妹方はやりにくいだろうなぁ。と思った。しかし、がんのことを黙っていたのは、そんな理由ではなかった。
「自分でがんの自覚が全然なかったから、他人からそういう目で見られたくなかった。それが一番強かった」
恐れていた抗がん剤の副作用も毛髪が抜ける以外のことはなく、毛髪が抜けるのは当然で抜けなければ逆に問題なのである。
「ウィッグつけて祈り会通いながら、そのうち気力がなくなると思ってたら、ますます元気になって、誰もがんに気づかないのが愉快で、カミングアウトするのが楽しみになって…」
姉妹方は感心したように聞き入り、私は得意満面である。
「『感謝しかなかった』って言うのよ」
と貞淑な妻の◆姉妹。
「試練の時、主は抱きかかえていてくださるのね」
★姉妹がしみじみと言った。
集会に顔の広い★姉妹が言う。
「みんな言うよ。『がんになってよかった』って…」
そう、そうなのだ。私も自分でおかしいな、と思うのだが、
がんになってよかった。
と思っている。「感謝しかなかった」というのは、そういうことだろう。
「胸にしこりを見つけてから、誰にも相談せずに祈ってイエス様だけに相談した。がんでありませんように、とか苦しい目にあいませんように、とは祈らなかった。『すべて主の御手から受け取ることができますように』とだけ祈り続けたら、その通りになった…」
たとえがんであっても、それをイエス様から与えられたものとして平安のうちに受け入れる。それができたのである。
そうか、「がんになってよかった」のは私が特別ではないのだ。また、手術前夜に「ふかふかの羽毛布団に包まれているような寝心地」だったのも私だけでなく、
「みんなそう言う」
な~んだ(^0_0^)
私は放射線治療で退座することとなったが、喜んでイエス様を証しでき、姉妹方にも喜ばれ…祝福されたひと時となった。
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