「がん」という冒険(59)

自動車免許を取得するのに、ものすごく苦労した。

否、苦労したのは私ではなく自動車教習所の教官だ。automatic車の「乗り放題コース」だったが、コースの予定表みたいなのがあり、教官について乗車する度にスタンプを押してもらうのだが、私はあまりにも進捗状況が遅すぎるため、

スタンプ欄が足りなくなり、紙を継ぎ足してスタンプ欄を作ってもらった。

\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?

私の担当は、私より少し若いさわやかな青年で、

「姉と弟みたいな感じでいきましょう」

とスタートしたのだが、回数を重ねるごとに笑顔がなくなり、

「◇(私の本名)さん、自転車乗れる?」

と聞かれる。自慢ではないが、私は電動付きでない自転車を今も乗っている。

同乗したことのない教官でさえ私の顔を知っているようで、目が合ってクスッと笑われた。(後ろ指を指されていたかもしれない)

ようやく卒業免許を取得できた時には、

あの(スタンプ欄が足りずに継ぎ足した)記録は、この自動車教習所の歴史を塗り替えたに違いない。

と確信した。

(一一")(-_-;)(/ω\)(-_-)/~~~ピシー!ピシー!(一一")(-_-;)(/ω\

 

着物の着付け……。

これに際しても、私には適性がない、という確信があった。若い頃、パーティコンパニオンのアルバイトをした時期があり、これはホテルなどで行われるパーティの席で客に酒を注いだり料理をとったりする。衣装には和服とドレスがあり会社で和服の着方の講習を受けたのだが、さっぱり覚えられない。何度教わってもダメで、仕方なく和服はあきらめドレスだけで通した。

自動車教習所に通ったのは、もう20年以上も前のことだが着物の着付け教室を探すのに、あの忌まわしい記憶がよみがえった。

 

まずはネット検索である。着付け教室は結構あった。驚いたことに「ワンレッスンワンコイン」が目に付く。「和服販売なし」「着物・帯レンタルで手ぶらOK」「全8回で終了証」など、大変気軽である。どこも「無料体験」を行っているから、いっちょ、行ってみるか~と思っていた。一体、どこで「金儲け」するのか、潜入捜査気分であった。そんななか、

どなたにでも簡単にマスターしていただける着付をお教えしています。

自他ともに認める「ぶきっちょさん」にもラクラク結べます。

というふれこみのあったのが、🌸着付け教室である。なんでも、前結びにした帯を後ろへ回す「魔法の着付け」らしい。これを鵜呑みにしたわけではないが、自転車で行ける近場で「無料体験」している。それで…いっちょ、行ってみた。そうして即日、決めてしまったのである。

決め手になったのは、

・近い。(電車に乗らずにすむ)

・覚えるまで習い放題。

・習ったことを「予習・復習しないでください」と言われる。(自分流になるから)

あと、40年の歴史ある教室だが、ここへ引っ越してきたのは今年の2月という。そこに、運命的…すなわち、エス様の導きを感じた。

先生も「楚々とした和服美人」ではなく、肝の据わった「下町のおかみさん風」。クラス制(絶対に落ちこぼれる)ではなくマンツーマン指導というのもよかった。

また「ワンレッスンワンコイン」はいかにも胡散臭いが、それに比べれば良心的な授業料だと思った。

 

そうして、通い始めた。まずは、基本の帯結び、お太鼓結び…なのであるが、

全然、覚えられない。

学習意欲はあっても学習能力がないのだ、と思う。マンツーマンで私が帯をやっている時、先生はスマホで猫の動画を見られている。その様子を見ながら、「あの~わかりません」と言うと、スマホを置いて教えてくださる。その繰り返しで自分でも嫌になる。稽古中に講師がスマホで動画を見るなど、ありえないことかもしれないが、

・こちらをじっと見られていると、私はただでさえ緊張して帯などできなくなる。

・先生も猫の動画なら癒しになり、私に「あの~」と呼ばれても頭を切り替える必要がない。(私を直視していたなら、痺れをキラすだろう)

全くもって論理的であり、賢いと思う。この道40年、一人一人に合った指導方法を体得されているのだ。

「果たして、覚えられる日が来るのでしょうか?」

泣きごとを言うと、

「覚えられるまで教えるから大丈夫」

なるほど…。

すると、帰り際、奥から出てこられた◆先生の母親、88歳の大先生が、

「今日、覚えたことは忘れていいですよ」

「…………………………………(*'▽')……………………………………………」

こんな着付け教室、他にはない。まさに、私のためにそなえられた教室だと思う。

ちなみに、運転に適性がないと確信した私は「私が運転するのは交通公害(/ω\)」と自戒を込め、身分証明以外には使わない。

いっさい運転せず、ゆえに、いまもゴールド免許である(^。^)y