「がん」という冒険(28)

さて、乳房温存(部分切除)か全摘(乳房切除)かである。

どちらを希望するか医師から問われたのには驚いた。

自分で胸を触診してみて、明らかにしこりはなくなっていたから、てっきり温存ですむと思っていたのだ。それを、

全摘の必要性が出てきた。

というなら、ショックだろうが受け入れるしかない。

ところが、

がんはかなり小さくなっているが、がんの周りに細かいがん(石灰化)の広がりがあるため、切除する量は割合多い

という。そもそも「がんの石灰化」とは何なのか?

わからないが、切除するべきもので、放っておけばがん化するリスクがあるのだろう、と思うしかなかった。調べたところで、事態は何も変わらないと調べようともしなかったのだが、先ほど、検索してみたら簡単にヒットした。

乳がん検診のマンモグラフィ検査でよく指摘される所見のひとつに「石灰化」があります。石灰化とは、カルシウム成分が沈着した状態のことをいいます。乳腺組織は乳汁という分泌物を産生する組織であることから、分泌物の中に含まれるカルシウム成分がマンモグラフィの画像に認められることがあるのです。この石灰化のほとんどは生理的な活動の中で生じるカルシウムの沈着であるため心配はいらないのですが、「石灰化がみられるので精密検査が必要」となるのは、乳がんと関連する石灰化もあるためです。

石灰化そのものはがんではなく、乳がん検診などでよく診られる「石灰化」は良性が多く、良性の石灰化ががんになることはないらしい。私の場合の「石灰化」は、おそらく、

がん細胞が増殖していくときに分泌物が産出されたり、がんの壊死に伴ったりすることで石灰化が生じることがあります。つまり、石灰化の部分は、がんが副産物を残しているということになります。

これは、悪性の石灰化ということになるのだろうか?

一応は納得する。致し方ない。

 

というわけで、

温存か全摘か?

温存の選択肢があるなら、温存でいきたい。

というのが素直な気持ちである。

全摘の方が温存よりも、明らかに再発リスクが低い

というならいざ知らず、

再発リスクにそれほどの差異はないらしい。

ネックになるのは、「見ばえ」らしい。

部分切除といっても、「切除する量は割合多い」らしいから、術後に乳房がどのような形状になっているのか? 

「変形が強くなる可能性がある」らしい。

その点、全摘して再建手術を施せば、心配はない。また、再建手術も保健適用で高額医療費制度の対象になる。

術後の形状は手術してみないことにはシュミレートできないという。もっとも、考えてみると、

変形が強くなるほど豊かな胸ではない。

ことに気づく。傷跡は残るのだろうか? 自分でも手術跡を正視できないようなことになったりするのだろうか?

そんなこともちらほらと考えてみる。そして、思う。

主は、残酷なことはなさらない。

容赦のない試練はある。耐え難い忍耐もあった。しかし、それは訓練であったり、救いの道が用意されていたり、自分がつくり変えられるためのものであった。

この自分に与えられたがんを振り返っても、残酷どころか、それは

恵みのどしゃぶり雨

だった。がんを宣告されてもうすぐ半年だが、がんを打ち明けていない相手から、「元気ないね」「何かあった?」…と心配されたことは一度としてなく、がんを打ち明けた相手からは、「元気だね」と驚かれ、「前より明るくなった」とも言われる。

自分自身、抗がん剤治療の副作用でハゲになり、ウィッグをつけて祈り会に通えるなど想像できなかったが、フタを開けてみれば、がんを知らない姉妹方には、いつがんだとカミングアウトするか(手術前?後?)楽しみになり、がんを知っている姉妹方には、元気な顔を見せるのが喜びとなった。

 

そんな感じで、温存か全摘か、「主の御心を示してください」と主にお任せして祈っている。