「がん」という冒険(16)
そして毎週金曜の祈り会。
思えば、かつては時折さぼっていた。
義務ではないし出席も取らない。
メンバーらしきものはあるが、常連の顔ぶれは決まっていて、10人とは集まらない。
Lineはやっているので、それで連絡を取り合い、「祈り」のお願いもする。
礼拝や祈り会は、主の前に重荷を下ろしに行くのだと私は思う。
自分のなかにたまった不満や心配、思い…を主に明け渡す。
すっかり身軽になって帰るのである。
もちろん、疲れていたり気が重かったり、忙しい時もある。
家で寝ていたいなら、寝ていればいい。
主はすべてご存じである。
そんなわけで、さぼることもあった祈り会を、私はがんを宣告されてからさぼっていない。
いつ行けなくなるかわからない。
という思いがあった。抗がん剤治療がどういうものかわからなかったし、また、毛髪が抜けたショックで、祈り会に行く気力などなくなるのではないか、と思っていた。
それが、フタを開ければ、抗がん剤治療による副作用は毛髪が抜ける以外のことはなく、毛髪は抜けたがショックで落ち込むこともない。ウィッグをつけて、その反応を楽しむ余裕さえある。今では、カミングアウトの時をいつにするか、その時を想像してワクワクしているのである。自分でも信じられない。
そうして、この日、祈り会が終わり昼食が終わり、掃除に入った時、私はある姉妹と二人になった。70歳前で4年前にがんの手術をされた◎姉妹で、温厚で人を疑うことも知らないような人である。あたりに誰もいないのを確かめて、私は聞いた。
「姉妹は、抗がん剤治療されたんですか?」
いきなりである。普通なら、意外な顔をするだろうし、「どうしたの?」と聞き返すだろう。しかし、◎姉妹は平然と、
「したわよ」
「副作用は?」
「あった。最初の1日や2日、具合悪くてね、ずっと寝てた」
なるほど、そうか~と思う。
「抗がん剤治療は手術の前?後?」
「後」
◎姉妹は嫌な顔ひとつせず、私の質問に答えてくれた。それをまとめると、
・病院に勤める娘のアドバイスを聞いてがん検診を受けたところ、大腸がんにひっかかった。
・ステージ2ですぐに手術することとなり、手術して開いてみるとステージ3だった。
・術後に3ヵ月の抗がん剤治療を1週間おきに受けた。
これだけ聞けば、私に「どうして?」と聞き返すだろう。それがいっさいなく、◎姉妹はするすると答えてくれたのである。子どものような人だと思う。
「術後の痛みは?」
「手術は全身麻酔だから全然平気だし、術後も平気」
「平気…?」
「(うなずく)食事も美味しくてね」
「だって、切ったんでしょ?」
「おへその下を5㎝。でも、大したことない。かゆいくらい」
「………………………………………………………………」
「退院してからの抗がん剤治療の副作用の方がつらかった」
ステージ3の大腸がんだが、風邪をこじらせたくらいにしか聞こえない。このブログにも書いたが、月一エステの担当者は、抗がん剤治療も行わない初期の子宮がんで500グラムの臓器を取ったが、術後が大変で20キロやせたと言っていた。
それを聞いていた私は、ある程度の覚悟はしていた。
がん検診でひっかかった時も、手術の時も、とくに何も気にならなかったという。
「(主に)お任せしてるから(#^^#)」
こんなお話を聞けたのも、感謝だった。