「がん」という冒険(6)
さて、ウィッグ(かつら)を購入し、祈り会やカーブスへはウィッグをつけて行くようになった。髪が抜け出してから慌てないようにと、余裕をもって前倒しのかまえである。
抗がん剤の副作用には個人差があり、私はまだ何の不調もない。むしろ、食欲もあり、よく眠れ、いつ不調になるかもしれないと思うために、活動的になっている。
副作用は個人差だが、毛髪が抜けるのは避けられないとよしみドクターから何度も念を押された。ウィッグは買ったか、室内は帽子、外出はウィッグが多いとか。そして、長い髪が抜けるのはゴミになるので、短く刈ってしまう人もいるとか。
いつ抜けるのか…?
抗がん剤治療が始まって2週間くらいからと聞いていたので、そろそろか…と思うと、やはりサスペンスである。
どんなふうに抜けるのか?
今村昌平監督の「黒い雨」で、主演の田中好子が原爆被害のために、風呂場で髪がごそっと抜けるシーンが思い出され、さすがに、それは怖い。
私は個人的に「ハゲ」というものと縁遠い。嫁ぎ先の家系にも実家の家系(3人の兄弟がいる)にもハゲている人がいないのである。これは不思議だ。大学の教授にはいたが、友人や知り合いにもいない。
私がハゲの初穂になるのか?
これはちょっと、複雑な心境である。
そうして、生まれて初めて、ハゲというものを考える。
私はハゲになっても、やがては生えてくる。
しかし、ハゲてしまった人は、大抵、残りの生涯をハゲと付き合うことになる。
これは、何という悩み苦しみだろう、と思う。
高齢になってからならともかく、若くして髪が薄い人も確かにいる。
そう、中学の頃、極端に髪の薄い女の子のいたことを思い出した。
天然パーマ(クセ毛)のショートで明るく、いつもリレーの選手だった。
抗がん剤治療がスタートしたのが12月1日。まだ、ウィッグなしでも外出できる。このままハゲにならないこともあるのか…?
ハゲを体験したいわけではないが、ほんの少し、どんな感じになるのだろう、という興味もある。
すると、風呂で洗髪していると、
ごそっ、というほどではないが、尋常ではない髪が抜けてきた。
ヒョエ~~~( ;∀;)
こうして、日々、抜け落ちていくのかと思う。
そうして、私は決断した。
夫に、髪を刈ってもらおう。
夫は、自分の髪を自分でカットする。髪は短くカットした方がウィッグも装着しやすい。(下から地毛がはみ出さない)
そんなわけで、今日、「断髪式」を行った。
私のリクエストは、
宝塚の男役
\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?
風呂場で切ってもらう。
ポリ袋の隅を大きめの三角に切り取って、そこから頭を通してかぶる。
浴室に移動して、ヘアカット用のはさみがあるのに、夫は100均のはさみで切る。髪の量を減らすわけではないので、こちらがいいのだと主張。逆らわない。
どうも、カットのラインが「ぶつ切り」っぽいが、クセ毛だし、「後で修正していけばいい」と言われ、任せる。
確かに、髪のボリュームは(長さを切ったので)半分くらいに減り、髪型だけを見れば、宝塚の男役かもしれない。
夫はどういう思いで私の髪を切ったのか…?
思いのほか、似合っているようにも思え、気持ちまで軽くなった。