「がん」という冒険(5)

「がん」というものになって、それを報告しなければならない人が何人かいる。

夫、娘達、兄弟など、その一人一人にどのように切り出し、どのように話すか…そして、どのような反応を受け取るのか…?それも冒険である。

月に一度通うエステは、1時間の施術が2700円だから決してお高くはない。ただ、施術に使うクリームや家庭でのお手入れに使う化粧品も購入することになるので、そこそこはかかる。

私は車も乗らないし旅行にも行かない。グルメでもなく服はバーゲンでしか買わない。歌舞伎やオペラの趣味もなく、これくらいはいいか、と思っている。通い始めて10年以上になるが、「肌がきれい」とよく言われる(^^)

この日、私は担当の真知子さんにがんを打ち明けると決めていた。さて、どのように切り出すか?施術のリクライニングに横たわる。

「あの~シミができてしまって」

目の少し下のあたりに、さほど目立つわけではないが、小さいシミを見つけたのである。真知子さんは、

「う~ん。シミの原因というのは紫外線とか外からの刺激だけでなくて、内側に潜在していたものが年齢とともに出てくることもあるんですね」

「じゃあ、これからどんどんシミが増えるということもあるんですか?」

「そうですね」

老化とともにシミが増えるのはそういうことかと思う。一度できたシミを消すのは難しいとも言われ、それはそれでショックだった。

「でも、ほかの人に『シミができて~』なんて言っちゃダメですよ。これくらいのシミ、シミのうちに入りませんから」

そんなものかと思う。これからシミが増えたり、できたシミは消えない…というのは衝撃ではあったが、それどころではない。

「シミの問題も重大なんですけど、実は、それ以上に重大なことが起きて…」

「?」

「がんになってしまいました」

「え!?」

乳がん

真知子さんにがんを告げる理由とは、真知子さんも昨年、がんを経験し手術を受けた。施術を受けながら、その話を聞いていたからである。仕事を長らく休んでいた理由でもあったが、淡々と治療の経過や思いを語る真知子さんの話が興味深く、私は熱心に聞いていた。

これはまるで伝染病のようではないか?

\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?

3人に1人はがんになる、と言うが、それは高齢者の占める割合が高く、現役世代では、まだがんになる率は高くはない。

ちなみに、ここの店長も随分前に乳がんを患った。

そんなこんなで、ウソのようながん談義が始まる。

私の場合は、胸にしこりを見つけて検査を受けたのだが、真知子さんは、ただの不調で病院に行き、本当に偶然にがんが見つかったと言う。

「迷ったり悩んだりする間もありませんでした」

がんはごく初期のもので手術して終わった。

そして、

「がん検診を受けても、がんが見つからないこともあるので、検査でがんが見つかったのはよかったですね」

と言われる。なるほど、そうなのか。また、この時にはCTとMRIの検査も終えて、がんは初期のもので転移もないことを報告できた。

真知子さんは独身、おそらく40代で実家の家族と同居している。そしてこの日、私は真知子さんから衝撃の告白を受ける。

「母は38で子宮がんで亡くなってるんです」

そして、真知子さんも子宮がん。30年前のことで父親は存命。父親には真知子さんが子宮がんになったことは告げていないと言う。

ちなみに、母親のことがあって、真知子さんはがん検診を受けていたと言う。それでも見つからなかったがんが、ひょんなことから見つかった。

38歳で母を喪うということは、子どもはまだ小学生くらいだろう。母を喪い、その母を喪った同じ病に自分がおかされるというのは…。

ただ事ではない。

真知子さんには、イエス様のことは語ってきた。真知子さんのことを祈ってきた。これからも祈る。私にがんが与えられたのは、真知子さんに福音を伝えるためであったのかもしれないと思う。

だって…不思議すぎる。