「がん」という冒険(3)
「抗がん剤治療を受けることになって、これをチャンス!とイメチェンしようと思って(^^)/」
デパ地下にあるウィッグ(かつら)サロンで私は言った。本音だった。私の髪はクセが強く、ずっとロングのままだったので、美容院に行くのは年に2~3度ですんだ。7月にバッサリ切り、ショートにすれば頻繁に行くことになるかと思えば、伸びてもそれなりに形になる。次に美容院に行ったのは、病院でCT(がんの転移)とMRI(がんの広がり)の検査を受ける前日で、実に4か月ぶりだった。気持ちの整理をつけたくて美容院に行った。
今やウィッグはCMでも盛んに宣伝されているが、店舗販売しているところは少ないようだ。通販やネットが多かった。ネットで検索して注文し、宅配されたものを自分で装着。気に入れば購入、気に入らなければ返品…でもよかったが、まずは、人間と接して選びたかった。接客してもらい、説明やアドバイスを聞きたい、という思いがあった。そうして、なじみのデパートの地下にウィッグサロンがあるのを見つけ、足を運んだのである。
サロンで説明を聞く。ウイッグには医療用ウィッグとファッションウィッグがあり、違いはウィッグと地肌の触れ合う部分に人肌が使われているかどうか、というようなことくらいで、それほど大きな違いはないらしい。
美容院のような鏡の前に座らされ、まずは、ポイントを押さえながら装着方法を教わる。難しくはない。
「お似合いですねぇ」
似合っているかどうかはわからないが、(かつらをつけている)違和感はない。が、値段を見れば、
240000円。
この価格で違和感があっては困る"(-""-)"
次に装着したのは160000円。価格の違いは髪が人毛100%かアクリル100%、人毛とアクリル混合、またオーダーメイドというのもあった。
飛び込みの来店であり、「初めて」「お試し」「相談」…と買うつもりのないことをにおわせてはいたが、何も買わずに店を出るのは難しいだろうと思い始める。
私は言った。
「使用期間も長いですし、一つで通すつもりはないので、100000円以内で…( ;∀;)」
ネットや通販なら、下を見ればキリがない。100000円どころか10000円以内もざらにある。しかし、そこまで値切りたくはない。「50000円以内」と言いたいところが、なさそうなので、100000円と言った。すると、奥から出されたウィッグは装着して悪くなかったが、
100000円。
\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?
抗がん剤の副作用で髪が抜けるにも、抜け具合というのがある。抜け具合によって、3回まで無料でウィッグの髪を調整(カット)するなど、アフターサービスがあるらしい。(有料だが)ウィッグにメッシュを入れたりもできる。店舗の強みである。
なるほど、アフターサービスは魅力である。デパ地下のサロンでウイッグのアフターサービスとは、(帰りにお茶?)優雅ではないか(^_-)-☆
ここで購入することになるのだろう、と覚悟した私は言った。
「カタログはありませんか?」
もちろんカタログはあった。
出されたカタログ…一番安いのが63000円で、(値段で選んだわけではないが)二番目に安いのを見せてもらう。それまで装着したどれも、それなりによかったので、あとは値段である。人毛100でもアクリルでも、取り扱いや見た目にそれほど違いはないというのも不思議だ。高額な人毛を使うメリットは何なのか?(人毛100というのは、生理的に気持ち悪い)
「家族と相談してまた来ます」ということもできないわけではなかった。しかし、がんライフには大事なアイテムである。迷う理由はとくになく、ジタバタしたくなかった。
スタイルが気に入り、サロンで二番目に安いウイッグを買った。もちろん、アクリル100だが(ブランドとはいわないが)ちょっとした店でスーツを(正札で)買うくらいの価格であった。
+ウィッグ用のシャンプー・トリートメント・デオドラントミスト…
(各それなりの値段)
アクリルに、
なんでシャンプー・トリートメント・デオドラントミストやねん。(興奮すると関西弁になる)
そういうことを言う人間は、デパ地下のサロンでかつらなど買わなければいいのである。
ウィッグ装着し気持ちよく支払ってサロンを出た。
そのままカーブス(筋トレ)へ行く。
「誰かわかりませんでした~」
「美容院行ってイメチェンしてきました~」
「え~大成功ですね~」
爽快である。