「がん」という冒険(2)

「頭の形がいいですねぇ。どれもよくお似合いです(^^)」

前回は「血管」をほめられ、今回は「頭の形」である。ここは美容院ではない。ウィッグ(かつら)を扱うサロンである。なんでも、私の頭は、

「絶壁じゃない」

「\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?」

私が通っている美容院は通い始めて十年以上になる。担当者も同じだが、

「絶壁」などという言葉を耳にしたこともなかった。

そうか、絶壁じゃないのか。

嬉しいわけではないが、妙な感慨があった。

 

さて、抗がん剤治療が始まって数日、まだ副作用らしきものはなく、今まで通りに生活できている。抗がん剤の副作用には個人差があるらしいから、以前通りに生活できているのは感謝なことだが、「毛髪が抜ける=ハゲてくる」副作用にはほぼ、例外がないらしい。これは、主治医から何度も念を押された。つまり、前もって覚悟(準備)しておく必要ありということである。

今やCMでも盛んに宣伝しているかつらであるが、今まで私には全く縁もゆかりもなく、使っている人も知らず何の知識もなかった。したがって、毛髪が抜け始めるのは2週間後くらいらしいから、早めに調べて準備を整えなければ、と思った。

検索したところ、かつらには「医療用ウィッグ」と「ファッションウィッグ」があり、私のような抗がん剤治療による脱毛や円形脱毛症のため(医療用ウィッグ)、それとは関係なく、おしゃれのため(ファッションウィッグ)がある。

「かつら」について全く知識ゼロ(まっ白)な私が一番驚いたのは、その価格である。

最初、病院でよしみドクターから手渡されたアデランス(医療用ウィッグのみ)のパンフレットには、「210000円」「230000円」「150000円」…目をむいた( ;∀;)

(よしみドクターがアデランスからリベートもらってるとは考えにくい"(-""-)")

100000円以下は少なく、最安値が「63000円」だった。

帰宅してざっ、と調べたところでは、「医療用ウィッグ」「ファッションウィッグ」ともに、価格帯はピンキリであり、通販もされている。注文して宅配されたものを「無料試着」し、気に入れば購入、気に入らなければそのまま返品、というシステムもあった。総じて、医療用ウィッグの方がファッションウィッグより高めであった。

 

混乱した。かつらなど、つけてみようと思ったこともなかった。それも、おしゃれでトライしてみるならまだいい。

実際に髪が抜けてハゲるのである。

あの、髪が多すぎて悩んだ私が。

ハゲる自分も想像できなければ、かつらつけた自分も想像できない。

というような混乱である。

相談した夫が、

「一緒に行って見立ててやろうか」

と言った。これは一見、優しさのようにも思える。(ちなみに夫には髪が薄い、という悩みはない)しかし、量が多いうえ、癖の強い私の髪を、夫は「爆発」と言ってよくからかった。この度、私がかつらを選ぶのに、夫が「(内心)面白がる」というのは否定できまい。それ以上に、金のない夫がかつらの料金をビタ一文、出す気のないことは明らかだった。

口を出しても金は出さない( ;∀;)

これは御免だと思った。そういう思いから、がんの検査を受けることから、すべて話し、一緒に祈ってくれている親しい姉妹に立ち合ってもらおうと思っていた。

 

どのような、いくらくらいのかつらにするか…。見当もつかない私は、ともかく、ネット検索したデパ地下のウィッグサロンに飛び込んだ。まずは第一歩、相談・下見…のつもりであった。