「がん」という冒険(1)

「血管がまっすぐで、いいですねぇ。なかなかありませんよ。こんな血管!(^^)!」

女性外来の主任医師、私の担当医である素敵な女医(よしみ)先生は、これでもかとばかりに私の血管をほめた。

血管をほめられるというのは不思議なものだが、おそらく、これから始まる私の抗がん剤治療の緊張をリラックスさせるための、リップサービスなのだと思う。

そんなユーモアと思いやりに感じ入った私は、

「人間的にも、わりとまっすぐです(^^♪」

と言った。なんともやわらいだ空気である。

前回のCT(がんの転移)とMRI(がんの広がり)の検査で、CTの結果(転移はなし)は聞いたが、MRIはまだであった。この日、MRIの結果も出ていて、がんは左の胸だけで右胸は大丈夫との報告を受ける。

そして、抗がん剤治療の簡単な説明、治療前の薬剤を飲み、注射を打たれる。血管をほめられたのは、この注射の接種時である。

抗がん剤治療は点滴で、3週間ごとに通院で行う。私の場合は半年。抗がん剤でがんが縮小したり消えたりするらしい。全く消えることもあるらしいが、MRIで消えているように見えても、4割くらいの確立なので開いて(手術)みないことにはわからない。したがって、抗がん剤治療後の手術は免れない。また、手術後にも通院治療は続く。

そして、左腕に注射器を刺されたまま、看護師に案内されて私は女性外来の診察室を出た。

 

抗がん剤治療…なんとも恐ろし気な響き。

脚本家の三谷幸喜が、発売になった『ボクもたまにはがんになる』幻冬舎)でも言っているが、「がん」というイメージが暗い。(著者はこの本で、5年前に前立腺がんになったことを初告白している)

私も同感である。頭が「がんがんする」とか、ダメージを受けて「がーん」とか、「がん」の響きは破壊的である。かつて、ピアニストの国府弘子さんが「がん」と呼ばずに「ぽん」と呼ぼうと提唱され、著者(三谷)は「素晴らしい」と評価。

ぽん……。

なるほど…と私も思うが、「ぽん」は定着せずどこかへ消えてしまった。

抗がん剤治療…。破壊力抜群の(響き)「がん」に抗(あらが)う治療なのかと思えば、火花が散りそうで空恐ろしくなる。確かに、かつては抗がん剤治療は入院して行われるものだったらしい。しかし近年では外来通院が一般的で、私もよしみドクターから「仕事しながら抗がん剤治療される方も多いです」と聞かされた。医学の進歩である。

よって、それほど抗がん剤治療に恐れを感じていたわけではないが、何せ、

初体験である。

前日、娘達に、

「明日から抗がん剤治療が始まるから」

と言い置いた時には、なんだか、ぐっとくるものがあった。しかし、一方で、

あの、噂に聞く抗がん剤治療とはどういうものか、実体験する。

ということに、多少の興味はあった。

本館5階の病棟の並びにある一室。抗がん剤治療の点滴はソファに腰かけても寝台に横たわってもよく、私は窓際のソファに座る。そして薬剤師から、抗がん剤治療の副作用のための薬、(自宅に帰ってから服用するもの)の説明を受けた。なんと、10種類もある。吐き気や頭痛、疼痛、出血や発熱…など。しかし、副作用は個人差があり、必ず飲む薬は3種類だけ。今日から飲むもの、明日から飲むもの、5日続けて飲むもの…。

がんを退治するだけあって、身体に色々影響を及ぼすものらしい。

なんともはや…である"(-""-)"

ともかく、抗がん剤治療が無事にスタートした。気分は悪くない。それで昼飯時、

コロナ禍のなか開店した、前から気になっていた焼き肉屋の「焼肉(カルビ)弁当」(1300円)を買って帰った(^^)/

 

と、ブログ書きながら思いついて、薬の袋(まとめて手提げ紙袋に入れてある)をのぞいてみたら…。

あらま。

抗がん剤治療の3日目(12月3日)の午前中に飲まなければならない薬を発見!

(;一_一)

今は4日の午後。慌てて薬袋の電話番号にダイヤル。薬剤部から女性外来のよしみ先生に回されたようだが、今日は不在。別の医師に回されて、待つことしばし。

で…

「飲まなくても大丈夫だそうです」

「…………………………………………(^^)…………………………………………」

今のところ不調はない。先は長い。どうなることやら…。