合格取り消し(2)
おそらく読者諸兄が案じられるのは、
「合格」取り消しになった娘αの心情ではあるまいか?
晴れて「大学合格」したのに、「入学できない」となれば、αは頭抱えるどころではない! 精神的にどうにかなってしまうのではないか…?
だろう……。
しかし、αは少し泣いたが、動揺はしなかった。
それはおそらく、
必死に勉強して勝ち取った「合格」ではなかったから。
αの合格は奇跡ともいえない。そんな涙ぐましいものではなく、いうなれば、
棚ぼた。
大学への憧れとか、夢、希望、目的……も、なかったから。
なにせ、去年の秋、あまりにもどうしようもない(起きてる時間より寝てる時間が長い)αに、
「大学行きたいの?」
と聞いた時、
「行ってもいいし、行かなくてもいい」
と答えたのであり、それは本番の受験を経ても変わらなかった。
αの大学合格は「ありえない」と踏んだ私は、
「専門学校はどうよ?」
と聞くと、
「β(双子の妹)が大学行くのに、私は専門学校は嫌」
と答えた。βへのライバル心、大いに結構だが、
「だったら~もっと勉強しろよ~~~!!!」
で、結局、αは勉強しなかったのである。
にもかかわらず、合格した。
しかも、同じ大学、同じ学部でβは「追加合格候補」であった。
βに対するコンプレックスを持っていたαは、
完全合格(βは「不完全合格」)と勝ち誇った。
はいいが…。
「入学」は閉ざされた。
しかし、αにとって、大学生になりたかったわけではない(なりたければ、とっとと手続きもしていただろう)ので、入学できないのは、それほどダメージではなかったのである。
そうして、βの「追加合格候補」が「合格決定」となったのを、αは本当に喜んだのである。αが父親に℡で知らせようとした。
奇跡を見るようだった。