祈りのこたえ(1)
私には高校3年になる双子の娘達がいる。
一卵性なので、見た目もキャラクター的にも酷似している。
どちらも朝は苦手なのだが、妹のβは高校が遠い分、遅刻も続いている。
この朝も、起きられず、遅刻確定…だった。
出がけにβが、
「どうして起きられないんだろう」
半泣きである。
はて、本人なりに悩んでいたのか…?と思う。
「寝る前に祈ったのに」
はてもはても…なんと、祈った…とは???
姉のαと違い、βはイエス様を「信じている」らしいのは知っていたが、
朝、起きれるように祈っていた、とは…。
嬉しさのあまり、私は笑ってしまった。
と…、
「なんで笑うのよ!」
怒られる。もっともである。
時間もないし、笑っている場合ではない。どうして、主に祈ったのに、朝、起きられなかったのか、私は答えなくてはならなかった。
「イエス様はβの御用聞きじゃない」
「だったら、祈っても仕方ないじゃない」
――そうなのである。私も嘗(かつ)てはそうだった。祈りにこたえてもらえない……ならば、祈る意味はあるのか???
「もう、時間がない。帰ったら話すから」
「本当?」
「はいはい」
果たして、帰宅してからも、βがこの問題についてこだわっているのか、はなはだ疑問であった。
こだわっているほど、執着があれば幸いだと思っていたが…案の定、βはすべて、忘れていた。