「暴行切り裂きジャック」(2)

前回、

壮絶なバイオレンスVS美味しそうなスウィーツ
と書いたが、この映画、
ファーストシーンがそもそもケーキ。
茶店というより、今でいうなら、
高野フルーツパーラー

のような、デザートメインの高級感漂う店なのである。
従って、愛想の悪い、アフロヘアにアンパンみたいなユリは非常に似つかわしくない。(面接で落ちるよな)
ユリが珈琲運んで来た男性客に名前聞かれて、珈琲ひっかける。
子どもがユリの制服をクリームで汚し、母親が誤る。
テニス帰りの女学生の一群が階段ですれ違い、その一人がユリとぶつかる。
これがみんな、ドラマの伏線となっている。
ユリのお相手、ケーキ職人のケンはウエディングケーキのような高さのケーキに白い生クリームをデコレーションしている。
そして、このデコレーションケーキを背景にオープニングタイトル。
スタッフ、出演者…タイトルが斜めに切り落とされるのは、さながらケーキが切り分けられるかのよう…。

まるで無駄のない演出は、唸るしかない。
精神病院から抜け出してきたらしい拘束衣の女(山科ゆり)を思わず殺してしまったユリとケン。その夜は、さすがのユリも怖ろしく、ユリとケンは怖さを忘れるように互いをむさぼり合う。
ケンが女が殺された時のことを回想しながら、2人は燃え上がる。
切っても切れない「共犯関係」になった2人。
普通のセックスでは物足りなくなる。それはそうだろうな…と(経験なくても)思う。
不満がるユリに、ケンは、「あの時はあんなことがあったから」
すると、
「あんなことがあれば、あの晩みたいになれるの?」
「どうかな?あれをもう一回やったら」
絶句するケンに、
「一人殺すのも、もっと殺すのも同じ」
――凄い。
で、血祭にあげられるのが、パーラーの常連だったテニス部の美少女(八城夏子)。
使われなくなったボーリング場に連れ込み、素っ裸の張り付けにして、刺す。
「やっちゃったよう、俺、やっちゃったよう…」呻きながらユリを犯していくケン。
激しく燃えるユリ。
そうして、死体を始末した次のシーンが、
2人でスパゲッティ食べてる。
ユリの部屋、テーブルに向かい合って、実に旨そうにスパゲッティを食べてる
のである。(ねぇ、カツラー様)八城夏子が無残に殺されたことなど、こちらも忘れてしまいそうなほど、旨そうに食べるのである。

これが妙な説得力がある。性欲が食欲を呼び覚ますんやな。
人間は獣なんやな。
一言の台詞もない。
「一仕事終えた」とばかりの解放感をむさぼるように、食べる。
物凄いインパクトなのである。ユリが、ここで一緒に暮らそう、とか、私達は肌が合うとか…言い出す。
そして、
「ね、今度は誰にする?」
はっ、とするケン。次なる犠牲者は作家夫人(岡本麗)、外国人墓地で無残に殺した後、ユリはケンに絡まりながら、恍惚となる。「…仲のいい夫婦みたい、私達。これからは…掃除、洗濯…何でもするよ」
本気でケンを好きになるユリと、今までユリのペースに呑まれていたケンが、覚醒する。
「殺し」を重ねることによって、自信を取り戻したのかもしれない。
この、ユリとケンの思いがクロスするのが、見事に描かれていく。
ケンに依存していくユリと、ユリから自立するケン。
それまで、ユリのリードによって「殺し」を重ねていたのが、自分の意志で女を次々、殺す。
挙句、
「私を忘れないで、捨てないで」
とユリに言わせるのである。

草食系男子VS肉食系女子
が完全に入れ替わる。
そうして…。
うるさくなったユリを、ケンがあっさりと殺す。
晴れ晴れしたケンのラストシーンが、何とも言えずカタルシスがある。
これは、ケンの成長物語であった。(#^.^#)(^_-)-☆(^^♪(*''ω''*((+_+))^_-)-☆

この映画、ロマンポルノ史に残る傑作らしいし、異存はない。しかし…。こんなにリアルに、刺したり切ったり…、特に…股を引き裂いたり…(擬音交えて)
血を流して…これって、「エロ」を求める観客にとって、どうなんでしょう?特に男性は…血が苦手とか聞きますが…。
この辺のところ、どなたか…よろしければ、カツラー様…答えていただけないでしょうか?https://www.youtube.com/watch?v=eKiPYE-Kc84