「暴行切り裂きジャック」(1)

桂先生が自作で一番好きな映画だと言われる。
バイオレンスの巨匠、長谷部安春の演出が冴えわたる。
オープニングタイトルから洒落ている。
スタッフ、出演者…映画名が、斜めに切り落とされていく。

1976年の作だが、全く古さを感じない。茶店のウエイトレス、ユリはアフロヘアに肉まんみたいな顔した肉食女子
これがヒロイン?と一瞬、目を疑う。
一度見たら忘れないようなインパクトである。
それまでのロマンポルノ女優(細くて綺麗)とは明らかに違う。
またこの映画、一番手の山科ゆりから八城夏子、岡本麗…高村ルナ…と綺麗処のロマンポルノ女優が次々、無残に殺されていく。この、
桂たまきVS(今までの)ロマンポルノ女優
の対比も見所だろう。
ユリの相手役は、同じ喫茶店で働くケーキ職人のケン。草食系メガネ男子である。
肉食女子VS草食男子
また、
壮絶なバイオレンスVS美味しそうなスィーツ
この対比も鮮やかである。
2人が雨の中、車に乗っていると、精神病院から抜け出したらしい拘束衣の女(山科ゆり)に出会う。
車に乗った女は、笑いながら(ケーキ用)パレットナイフで自分の腕を切りつける。
気味悪くなった2人は女を下ろし、車にしがみつく女を振り落とし…死なせる。
廃車置き場に死体を運び、身元がばれないよう裸にする。
死体を引きずっていると、地面の鉄材に死体の股が引っかかり、股が裂けて血が飛び散る。
その夜の2人は、怖さを忘れるように互いを求め合い、それが異常な興奮を呼び覚まし、燃え上がる。
2人は、ただのセックスでは、満足できなくなる。
ユリが言う。
「一人殺すのも、もっと殺すのも同じ」
40年前、快楽殺人など、ほとんどなかった時代である。