象を喰った連中(3)

この映画、死んだ象を喰った5人が病原菌のおかげで、血清なければ30時間後に死ぬ、という大筋です。
これだけ読むと、非常にサスペンスフルなんですけど、
手に汗握る臨場感がない。
死を前にした登場人物が、何処かおっとりしてるというのもあるのですが、
30時間後に死ぬ人間が、ピンピンしてるわけないやろ。
というのはあります。
死が秒読み状態だとしたら、上野駅に駆けつけるどころではありません。
妻子や親、医師や看護師に見守られ、呻き苦しみながら死の訪れを待つ、というのがリアルなのではないでしょうか。
この映画は、端からそんな臨場感を狙う気はなく、
シリアスなエンディングにはならないんだろうな。
という安心感を持ちながら見ることは出来ます。
で…上野駅に届いた血清…ですが、
一本が破損。
5本あった血清が4本になったわけですね。
つまりそれは、
(血清を打てない)1人は死ぬ。
ということ。
スリリングです。
上野駅の5人、互いに「俺は嫌だ」…といがみ合うも、
「遅れて来たのは俺だから、間に合わなかったと思えばいい」
若い馬場の言葉に、互いに譲り合うようにもなり…。
独身(身内なし)の和田が、くじで決めようと言い出すんですね。
マッチを5本出して、先の折れてるのが「あたり(=血清なし)」だと。
で、くじを引いた4人は、先の折れてないマッチ棒。
ならば…残った一本が「当たり」のはず…。
ですが、実は残った1本も先は折れていなかったのです。
和田の視線が、他の男達の妻や子に注がれます。
独身で身内も亡く、象を喰おうと「言いだしっぺ」の和田が、責任を取ったかたちです。
想定外の展開…。
そして…。
和田が「死に水」取って欲しいと頼んだ下宿屋の娘、富江
「面倒くさいから遠慮しちまった」
告白する和田に、富江ジーンとなります。
この気持ち…わかります。
和田、カッコ良すぎます。
「私、喜んで和田さんの…」
午後10時には死ぬことになってるようで、
「和田さん、死んじゃイヤ」
盛り上がります。
血清打った4人もやって来ます。
鳩時計が10時を告げ…
「苦しい?」
「何ともない」
場面変わって、冒頭に登場した若妻と新婚旅行に来てる小島博士、再び登場です。
ソシアルダンスを踊っているところへ電話です。
「生で食った者はいない?焦げるくらい火を通した…?」
確認して、
「○○菌以外は、体外温度70度以上の熱で死滅するだろう!」
そして、
「慌てて血清注射して、体中かゆくなっても知らんぞ」
ラストシーンは和田と富江
アツアツです。
「私、和田さんにいつまでも生きていてもらいたいの」
「君のためなら50年でも100年でも生きていたいよ」
「象じゃあるまいし」
「象の話はおしまいにしようよ」
この映画桂千穂著「カルトムービー日本映画 1945→1980」からの選出です。
また先生おススメのDVDをお借り出来ましたので、順次ご紹介したいと思います。
ちなみにこの本、売れているそうです。