「徳川セックス禁止令 色情大名」(3)

ううむ。
かなりはしょったつもりが、ここまでで、88分の映画の30分、3分の1にしか達していない。
改めて、この映画の密度の濃さに驚嘆します。
急がねば。
「こともあろうに異国女を側室にされようとは、どういうことでございます」
中臈、藤浪演じる三原葉子、堂に入った演技です。

忠輝の家老、殿山泰司と真っ向勝負です。
「殿様は、お気が狂われてるとしか思えない」
一方、サンドラによって性に開眼した忠輝は、
「余は、下賤の者が味わっている半分の喜びも知らなかった。取り戻すぞ」
武芸一筋、34歳まで童貞だったのですから、無理ないかもしれません。
側室サンドラの美貌とテクニックに骨抜きにされる殿です。そんな忠輝を、
「わらわは何のために、このような地の果てまで来たと思われるか」
21人の愛妾をもつ11代将軍、家斉、その34番目の姫君、清姫が訴えます。
「女とは男を喜ばせるもの」
忠輝との初夜、忠輝の前に足を広げ、
「参れ」「早う参れ」
では…。
忠輝、ようやく、男としての自覚に目覚めたとも言えます。
家老の戒めに、
「徳川の御紋に尻尾をふるか」
と反駁し、
「余は城下を視察してまいる」
白頭巾で馬にまたがり、城下を視察した結果、
「藩主として命令する。今後一切、男女の交わりを禁止致すぞ」
「閨房(けいぼう)禁止令」が発令されます。

これには、
「下賤の者が長い間、自分の知らぬ快楽を貪っていたことへの嫉妬が、どす黒く噴き上げていた」
とナレーションが入ります。
「権力者は、性の快楽においても権力者でなければならない」
…ポルノ映画とは思われない、説得力…です。
男子の股ぐらに封印が押され、これを毎日チェックされて、
消えていたら…厳罰。
「江戸の桜は綺麗であろうのう」
清姫はやりきれません。
異国女の側室に入れあげている夫。
江戸からはるばる九州に輿入れしたのが…。
「もう、わらわは姫ではないのじゃ」
涙します。出戻りは許されないのです。
「すべてはあの、サンドラという女狐のせいじゃ」
腰元たちによってサンドラはいたぶられます。
一方、閨房禁止令によって、頭痛、鼻血の家臣が続出…。
閨房禁止令を犯した者は、処刑されていたのです。
忠輝の家臣に、禁令を破る者が現れます。
「我らふたり、死をもって殿をいさめようと。私の心中、お察しを…」
忠輝が最も信頼していた家臣、森田勝馬
許嫁(いいなずけ)梢(こずえ)と契(ちぎり)を交わしてしまいます。
切腹を覚悟していた勝馬、死ぬことで、忠輝の目を覚まさせようとしたのですが…。
忠輝の下したのは、
梢の切腹勝馬介錯…。
作法通り、お白洲の上で白い衣の梢が上衣を脱ぎ、両の乳房がこぼれます。
白い腹部に刃(やいば)突き立て…。
緊張感みなぎり、息を呑みます。
「森田さま、梢は幸せでございました。一度だけでも貴方様と契(ちぎ)れて…」
見事に腹を切るも、勝馬は刀振り上げたまま介錯出来ません。
苦しさのあまり、梢は心臓に刃を立て、血まみれで勝馬に「介錯」を催促します。
グロ(テスク)なシーンのはずが、哀切で格調高く、これだけで一本の映画になりそうな名シーンだと思います。