映画評

花筐(はながたみ)(4)

10月3日午後1時、渋谷。 12月16日公開の「花筐」、マスコミ試写に行く。 桂先生からいただいた試写状もって受付に行くが、先生の知り合いはおらず、何も言われなかった。 試写状の宛名「桂千穂」が女名だったから、私が「桂千穂」だと思われたらしい…

花筐(はながたみ)(3)

先生から映画「花筐」試写会の招待状をいただいた。 「宛名が『桂千穂』ですけど大丈夫ですか?」 と聞くと、 「『桂千穂の弟子です』って言えば断れないでしょう」 お〜っ! 先生、もうずっと、 「僕に弟子はいません」 と頑固に言われていたのである。(だ…

花筐(はながたみ)(2)

先生の新著…。評判いいらしい!さて、この映画「花筐」。原作は壇一雄、1937年の作。この年、壇一雄は日中戦争の勃発で召集されている。 25歳。「最後の無頼派」とも呼ばれる壇だが、この「無頼」の裏には切実な戦争経験があるようだ。 少年時代に「花…

花筐(はながたみ)(1)

このブログではお馴染みの脚本家、桂千穂…先生。 知り合ったのは、私がシナリオ作家協会主催のシナリオ講座に通っていた頃だから、相当な昔である。 あれから、コンクール受賞を機にライターデビューし、結婚し、母親ともなった。 私もええ年になったが、先…

「処女が見た」(3)

西入庵の本寺、永光寺の新しい住職、行俊(若山富三郎)は初対面の智英尼に、 「あんたのような綺麗な人に出会うとドキドキします」 などと抜け抜け言う。今ならセクハラ住職だろう。 若山富三郎と言えば好色なイメージもないが、この映画の行俊は、 脂ぎっ…

「処女が見た」(2)

京都洛北の尼寺、西入庵の庵主、智英尼(若尾文子)は本寺である永光寺の住職の紹介で和恵(安田=大楠道代)という17歳の少女を預かることになる。和恵は伊勢湾台風で両親を喪い、叔父夫婦に引き取られるが色々と問題を起こし高校を停学処分にもなっていた…

「処女が見た」(1)

ブログ開くと「秘 海女レポート 淫絶」のポスターが飛び込んで来て、戸惑ってしまうのだが、 ポスター削除するのもおかしい、と思い、敢えてそのままにした。 敬愛する桂先生の作品だもの。 しかし、さっき気がついて「淫絶」という語、辞書で調べたらなかっ…

「祈りのちから」(2)

一見恵まれて、幸せそうに見えても内実はわからない。この映画の主人公、エリザベスの家庭も世間的には恵まれていたが、内実は崩壊寸前。 夫婦の関係は完全に冷め切っていた。 それが、エリザベスの「祈り」によって変えられていく。 クララから教えられた主…

「祈りのちから」(1)

映画館で映画を観ることのなくなった私だが、押し出されるように観ることになった映画、 「祈りのちから」 まず、知り合いの姉妹(=女性クリスチャン)から、いい映画らしいよ、とメールを受け取り、(一緒に行こうと誘うわけではない)礼拝に行ったら兄弟…

「悲愁」(3)

午後遅く、やって来たアカデミー賞委員長、ヘンリー・フォンダ。 白いパンツスーツ、黒いつば広の帽子、黒いサングラスに白手袋のアントン(偽フェドーラ)。 「表彰式にエスコートしましょうか?」 と別荘内ではバンドー医師がソブリアンスキー伯爵夫人(真…

「悲愁」(2)

回想終わり、ファーストシーンの葬儀場。 葬儀を仕切るソブリアンスキー伯爵夫人。彼女が 「あなたのせいで彼女は列車に飛び込んだ」 とゲトワイラーに言えば、彼も 「自殺に追い込んだのはあなた達だ」 やり合う2人。 「あなたは目も見えない馬鹿者よ」 と…

「悲愁」(1)

原題「FEDORA」、1979年、米、仏、西独製作。脚本・監督はビリー・ワイルダー。 「フェドーラ!」 女の叫び声。 一人の女が走って来た列車に飛び込む。 死んだ女は若くして引退した伝説のハリウッド女優、フェドーラ(マルト・ケラー)。 「ボバリー夫人」「…

「デッドマン・ウォ−キング」(3)

特赦審査会で特赦は下りず、一週間後の死刑が決まったマシュー。 事件の被害者とは縁も所縁もない…どころか、ただの映画観賞者でしかない私でさえ、 こんなん(マシュー)に特赦が下りたらどうなんねん。 神も仏もないで。 と言いたいところだ。 確かに、無…

「デッドマン・ウォ−キング」(2)

独房の中で死を待つ日々のマシュー。 マシューに面会するへレンは刑務所も死刑囚も初めて。 面会前、へレンは教誨師(神父)に会い、なぜ、マシューを助けに来たのか問われる。 「興味に駆られて?憐み?」 ヘレンは答える。 「彼が私に来てくれと」 それ以…

「デッドマン・ウォーキング」(1)

「先生、これ『サイモン・バーチ』購入しました」 アマゾンで2枚注文し届いたDVDである。 「送料込みで1050円でした」(2枚注文しても送料はそれぞれ350円かかった) レシートももって来た。 「ああ、じゃあ貸してください」 「………先生、お買いになると言わ…

「サイモン・バーチ」(3)

「わたしはあなたがたのために立てている計画をよく知っているからだ。―主の御告げ―それはわざわいではなくて、平安を与える計画であり、あなたがたに将来と希望を与えるためのものだ」 (エレミヤ書29章11節) 「神を愛する人々、すなわち、神のご計画…

「サイモン・バーチ」(2)

サイモンの親友、ジョーの母親は高校3年でジョーを産みました。 未婚のまま、ジョーは父親の名前さえ知らされません。 爽やかなお色気振りまく美女、ジョーの母、レベッカ。サイモンもメロメロです。 実は、 レベッカの母、ジョーの祖母は、ホテルと間違われ…

「サイモン・バーチ」(1)

原作は「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」などで知られるジョン・アービングの「オーエンのために祈りを」。 1998年、アメリカ映画です。 「あの奇妙な声の少年を私は生涯忘れない」 映画はジム・キャリーのモノローグから始まります。 「…

「第三の影武者」(3)

篠村の命で、3号雷蔵が瀕死の(池本)安高抱えて逃げ込もうとした桜洞(さくらほら)城。 城主三木自綱の息女、照姫(高千穂ひずる)は安高との婚儀が進んでおり、助けてくれると踏んだのですね。 さて、桜洞城内では、 「一夜にして池本も滅んだか」 池本の…

「第三の影武者」(2)

戦で目をやられた安高。 影武者の3人も同じように目を潰されることになります。 恐れをなして逃げ出す2号はあっけなく篠村(金子信雄)につかまり、1号3号の目の前で殺されます。 もう、逃げられません。 1号3号…医者に火であぶったメス状の刃物を左目に突き…

「第三の影武者」(1)

桂千穂著「エンタムービー 本当に面白い時代劇」の表紙にもなっている映画です。 市川雷蔵がホンモノと偽者を一人二役で演じます。 時は戦国時代、山に囲まれた飛騨では、武田、上杉、織田の侵入がない代わり、小領主の小競り合いが絶えません。 そんな小競…

「三人の名付親」(3GODFATHERS)(2)

そんなわけで、生まれたての赤ん坊を引き受けることになった三人。 ここは砂漠で水もなく、保安官に追われる身。 こんなお荷物、しょい込む場合違うで。 と思うのですが、 育児書と首っぴきで、あーだこーだ言い合うわけです。 『スリーメン&ベイビー』のノ…

「三人の名付親」(3GODFATHERS)(1)

1948年、ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演のアメリカ映画です。 どうして急に、ジョン・フォードにジョン・ウェインなんでしょうね? (ロマンポルノに石井輝夫に桂千穂…だったのに) このDVDが、なぜか礼拝に行ったら回ってきて、他に借りる…

「大菩薩峠」(2)

富士を見下ろす大菩薩峠、娘と巡礼の旅路にある年寄りを、理由もなく一刀のもとに斬り捨て、 奉納試合で竜之介と対戦する兄のため、八百長試合を頼みに来た妹を手籠めにし、 (妹は嘘で実は妻、夫には離縁される) 奉納試合で八百長どころか、相手を殺してし…

「大菩薩峠」(1)

どうして今更「大菩薩峠」なのか、と問われたら、 「見てしまったから」 はい、テレビで。 すみません。今まで、見てなかったんです。 でも、やっぱり 「今更、『大菩薩峠』じゃないでしょう」 という葛藤があったのですが、もう一度録画を見たら、 書かない…

「女子学園 悪い遊び」(2)

「だいたいね、嘗めてるよ。あたい達を学校祭の幹部に指名するなんてさ!」 川崎にある女子高、白薔薇学園中等部。 3年の女番長花子の啖呵で映画は始まります。 演じる後藤ルミ、眼の下に隈みたいなアイライン、ド迫力、どう見ても中学生には見えません。 (…

「女子学園 悪い遊び」(1)

1970年、ダイニチ映配。 桂先生が数あるDVDの中から「滅茶苦茶面白い」と太鼓判を押されたので、お借りしました。 「カルトムービー 本当に面白い日本映画1945→1980」にも紹介されています。 このタイトル、ちょっと怯(ひる)みました。 100%ポルノだと思…

「徳川セックス禁止令 色情大名」(4)

1972年、GWに公開された東映映画。 徳川家の34番目の清姫が性的に訓練され開花するプロセスを、実にコミカルに丹念に、ユーモラスに描いています。 一方で、白人(サンドラ・ジュリアン)の側室に女の切腹、34歳まで童貞だった殿が出した「閨房(セックス)…

「徳川セックス禁止令 色情大名」(3)

ううむ。 かなりはしょったつもりが、ここまでで、88分の映画の30分、3分の1にしか達していない。 改めて、この映画の密度の濃さに驚嘆します。 急がねば。 「こともあろうに異国女を側室にされようとは、どういうことでございます」 中臈、藤浪演じる…

「徳川セックス禁止令 色情大名」(2)

江戸文化の爛熟した文化文政、徳川11代将軍、家斉(いえなり)の時代。 家斉は正室とは別に、21人の愛妾をもつ、精力絶倫将軍。 54人の子供が量産され、 大量生産された姫と若君の配給先(縁組み)を、家臣は必死に探さねばならないわけです。そして、 34番…