団鬼六

昨年、亡くなった団鬼六と、その娘、黒岩由紀子共著『手術はしません 父と娘のガン闘病450日』を読みました。
団鬼六という名をご存知でない方も、花と蛇のタイトルくらいは知っておられるかもしれません。
1974年、日活以降、何度も映画化され、少し前は杉本彩が静子夫人を演じ、最新版は2010年の小向美奈子主演作「花と蛇3」でしょうか?
何でも、今年も公開予定で静子夫人の有力候補が高岡早紀…にちょっとびっくり。
花と蛇」はシリーズ化されてますが、美貌の令夫人、静子がSMの餌食となり、やりたい放題…やられるというような基本設定だったと思います。
高岡早紀が静子夫人引き受ける…?
ギャラ5000万という噂もあり、5000万なら引き受けるのも仕方ないのかなぁ。
でも、主演女優のギャラで5000万、一体、制作費なんぼやねん???
勝手なことを色々考えます。
で、団鬼六です。
知る人ぞ知るSM小説の第一人者。
この団先生が食道ガンになり、亡くなるまでのことを本人と娘が往復書簡形式で代わる代わる、それぞれの立場から書いています。
黒岩由紀子(1967年生まれ)さんの書かれた「はじめに」にこうあります。
「子供の頃、私は父がうちで仕事をしているのがいやだった。(略)父が執筆する時間は真夜中で、丁度私が学校から帰ってくる時分にパジャマ姿で起きてくる。そして私が連れてきた友だちに、愛想よく「こんちは!」などと挨拶するのだ。髪の毛はてんでんバラバラのぼさぼさで、パジャマの上と下の柄は何故か必ず違う。(略)遊びにくるたびにパジャマ姿で登場する父を見て、友達は「お父さんは病気なの?」と気の毒そうな顔をした。」
なかなか微笑ましいですね。何でも小学生の頃は「推理小説を書いている」と教えられていたそうです。で、
「日中、自宅が撮影現場になるときもあった。昭和四十年代の後半に住まいにしていた目黒の借家は、百坪ほどの敷地に格子戸、丸窓、欄干などが設えられた風情のある木造建ての屋敷だった。(略)撮影は私や兄が幼稚園や学校に行っている間にされていたようだが、時間が押してしまうと、裸のお姉さん方がさも苦しげに縄で縛られているところに幼稚園児が遭遇することになる。私がぎょっとして立ちすくんでいると、父は慌てて障子をしめて、
「今な、ちょっとお写真撮ってるからね」
バツの悪そうな顔をする。」
団先生は「鬼プロ」という会社を創られていたので、このような「お写真」も自宅で撮っていらしたのですね。光景が目に浮かぶようですが、笑えません。さりげな〜くすごいこと書いてますよね。でも、まだまだ…
「得体の知れない道具は、うちのあちらこちらも無造作に置かれていた。「これは、なーに?」と父に質問すると、ちょっと困った顔をしながらも、「木馬」とか「吊り輪」とか「こけし」などと教えてくれる。教えてくれはするが、父は見るからにたじろいで、「あっちで遊んでこい」と隠そうとする。しかし幼い私には、それらが魅力的な玩具の名前にしか聞こえなくて、父が隠そうとすればするほど、しつこくまとわりついた。吊り革にぶら下がって遊んだこともある。木馬は乗るところが三角になっていて座るのが痛そうで、最後までどうやって乗るのかわからずじまいだった。こけしは気持ち悪かった。」
すごい告白だと感心します。この団先生の娘…やはり、タダ者ではない。経歴を見れば立教大学を出て就職し、出版、企画の仕事に携わって2007年から団鬼六事務所の秘書として、最後まで父を支え続けたとあります。結婚してお子さんもいらっしゃるようで、何だか、感動します。
非常に浅薄な考えですが、父親がSMの第一人者、大御所。「お写真」の現場も幼い記憶に刻まれているんですね。当然、からかわれたりもしたでしょう。それが歪むことなく、ぐれることなく、父親思いの娘に成長してるのですから。一方で、団先生自身も、型破りでめちゃくちゃしながら、子供らにとっては「良き父親」だったのだろうと、これにも感動します。「得体の知れない道具」を家のあちこちに無造作に置くのは無神経すぎると思いますが(汗))
実は、我らが親愛なる桂千穂先生。日活ロマンポルノで花と蛇 地獄篇」「薔薇地獄」「黒薔薇夫人」など、団鬼六原作を手掛けておられ、団先生とも親交がおありになったそうです。
「すごく破天荒な人だけど、家庭はすごく大事にしたみたいですね」
黒岩由紀子さんの兄は、慶応だそうです。(「団鬼六の息子」って、言われ続けたでしょうね)
で話かわって、桂先生宅を訪問した折、「桂千穂コレクション」復活のため、書棚を拝見したら、
「黒薔薇夫人」(原作 団鬼六
発見。
「これは…?」
とお尋ねすると、
「これは傑作です。団鬼六も喜びました」
「貸してください」
「でも、当時、高1だった甥が見たら、『気持ち悪い』と言って寝込みましたよ」
ますます気になる。
「お借りします」
借りて帰りました。
キタ Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!