「誕生死」(1)

6月に行った舞台公演「Women」。
ある産婦人科の大部屋に入院する3人の妊婦のお話でした。
「妊娠」と言えば「オメデタ」
と言うし、悪阻(つわり)とか体調不良があっても、
「妊娠は病気ではない」
と言われます。確かに、
新しい生命の誕生。
それは素晴らしいことだし、オメデタイことに違いありません。ただ、
オメデタイだけではない。
生まれる命、生まれない命。
生まれるのは、天使とは限らない…。
チラシに使ったコピーですが、私が双子出産のため産婦人科の大部屋に1ヶ月余り管理入院しながら、感じたり考えたりしたことでした。ホント…
妊娠・出産は十人十色。
なんですよ。究極を言えば、
「母(=妊婦)の命と引き換えに誕生する命もあれば、新しい命を犠牲にして、母が生き残ることもある。また、母子ともに助からないケースもある」
シ──(-ω-)(-ω-)(-ω-)──ン
妊娠=オメデタイ
を否定するつもりはありません。ただ、
オメデタイだけでない。
妊娠の裏側に照明を当てることで、「母性」とは「命」とは、「誕生」とは何か…を問い直したい。これが、この舞台のテーマであり、メッセージでした。
そして…。
小さな舞台ながら、想定外の反響があり、喜ぶ以上に驚きました。女性はともかく、
未婚の若い男性や孫がいるような世代の男性
から「感動しました」というアンケートをいただけたのは、今でも信じられないようなことです。
このような反響に応えたい、と思い、次作に取り掛かろうとしています。そんな中で出会ったのが、
「誕生死」
http://www.amazon.co.jp/%E8%AA%95%E7%94%9F%E6%AD%BB-%E6%B5%81%E7%94%A3%E6%AD%BB%E7%94%A3%E6%96%B0%E7%94%9F%E5%85%90%E6%AD%BB%E3%81%A7%E5%AD%90%E3%82%92%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%97%E3%81%9F%E8%A6%AA%E3%81%AE%E4%BC%9A/dp/4385360901
という本。すごいタイトルですよね。でも、無事に二人の娘(双子)が誕生した時に感じたこと、
誕生と死はつながっている。
直感でした。
小さいながら、目鼻口…手足…。爪や睫毛まで備わっている我が子は、奇跡…神の技としか思われず、一体、何処から来たのだろうと思い、一方で、人生を終え、「あの世」というものに旅立つ一生…。「神の領域」と言えるこの二つが、つながったように感じました。そこへ、
誕生死。
すぐさま取り寄せ、読みました。これは、
出産前後に我が子を亡くした体験を、13名の父母が実名で、ありのままの手記として綴ったものです。
宿った命が産声を上げて無事に誕生する。
その裏側で、
「流産」「死産」という現実は必ずある。
実に「流産率」というのは、一般の妊婦の1〜2割と言いますから、決して珍しくはない。当の私も、双子妊娠を知らされたと同時に、
「(双子はリスクが高く)流産率が3〜4割。一人ダメなことも二人ダメなこともある」
と医師から、いきなり釘を刺されました。
ガ━━(゚Д゚;)━━━ン!!
生まれる命、生まれない命…。
「生まれない命」だって、お腹の子に話しかけたり、胎動を感じたり、将来を想像したり…したはず。
生まれない「命」も「命」なんですね。
この世に誕生しなくても、胎内に「生まれて」くれた。
一般的には、「流産」「死産」は、触れてはいけないような、「闇に葬られる」ようなところがあります。「メデタイ」はずが、一転して「メデタくなくなる」わけですね。口に出すことはなくても、経験者は結構、身近にいるものです。「死んだ子の年を数える」のはどうかと思いますが、それを「なかったこと」にはしてほしくない。
生まれない命がある。
だからこそ、生まれた命は尊いのだし、今、生きている自分の命を大切にしなければ。