『私の頭、ぶっ壊れてるんです』

「相変わらず美貌だな」
それが、6年ぶりに再会した穂積先生の第一声だった。
全く、外見も恐ろしいほどお変わりないが、言葉つきも全く同じだ。
こんな…歯の浮いた、リップサービスだかセクハラだか危うい台詞を、臆面もなく言い、また、それが似合う。先日お亡くなりになった俳優、児玉清氏と世代も同じで、児玉氏に負けないほどのダンディ。
しかも、作家や画家…音楽家…ならいざ知らず、穂積先生は
医師。
それも、「医者の中で一番自殺率が高い」とされる、
精神科医
なのである。
ご紹介しよう、池袋駅から徒歩2分、「ほづみクリニック」院長、穂積登氏は、このような方です。 
http://www.hozumiclinic.com/greet.php
この日は、4時から護国寺にある光文社「女性自身」で打ち合わせがあり、池袋から有楽町線に乗り換える。そこで、池袋で下車し、久々に「ほづみクリニック」を訪れ、先生にご挨拶と、舞台のチラシを置かせていただくお願いをしに行った。
会いたいと思いながら、きっかけがなく、なかなか会えない相手というのがいる。穂積先生もそうで、前回、ここを訪れたのも、舞台のチラシを置かせてもらいに来たのだ。何を隠そう、この穂積医師は、
私に「シナリオライター」を勧めた張本人
なのである。おそらく、この人との出会いがなければ、私は「シナリオを書こう」などとは、生涯、思わなかったと思う。よって、
未だに私が売れないシナリオライターをやっているという、穂積医師の罪は重い。
シ──(-ω-)(-ω-)(-ω-)──ン
などと思ってる場合ではない。
チラシを見せながら、舞台の宣伝をする。どうしても、この舞台を穂積先生に観て欲しかった。
「石堂先生が、この台本読んで『近年、稀に見る傑作』と…」
石堂淑朗」は、やはりインパクトがあった。医師の眉がピクリと動く。
そして、私はキメの台詞を言った。
「『台詞が自然で、実にナチュラルで、モーツァルトそのもので、モーツァルトを背景に台詞を読むと最高』なのだそうです」
医師は、はたと、真顔で私を見た。
「そりゃ、行かなきゃな」
\(∇⌒\)☆ア☆リ☆ガ☆ト☆ウ☆(/⌒∇)/
「でしょう、でしょう…?(^○^)/ ヤッホー」
曖昧に笑う医師に、
「私が『教養のないのがコンプレックスで』って言ったら、『教養なんて必要ない。モーツァルトも教養がなかった』って…」
「すごいな。最高の褒め言葉だな」
マジである。ちょっと戸惑う。ちなみに同じことを夫に言ったら、
「それは、石堂さんに見放されたんだ( -∀-)ノ」
確かに、そういう見方もある。まぁ、よい。ただ…
穂積医師が私に「シナリオライター」を勧められたのは、
しゃべってる台詞が面白い。
ということだった。この点、「台詞が自然で、実にナチュラルで」つまり、「教養を要しない」「素のまま」ということかもしれない。
先生は我が家に、誕生して間もない娘達を見に来てくださったことがある。
「どうも、娘達は私の仕事に興味があって…。私は、あまり影響を与えたくないんですけど」
「影響与えないわけないだろう」
「どうしてですか?」
「こんなに変わってる母親なんだから」
「変わってますか?」
「おまえ、俺の所へ来た時、『私の頭、ぶっ壊れてるんです』って言ったんだぞ」
「シ━━(^(^(^(^(^(^ω^;lll)━━ン」
そ、そんな…。女学生時代のこと言われても…。
私と穂積先生との出会いは、大学内の「保健管理センター」。そこでカウンセラーをしていた先生の元へ、私は、人生に絶望して、通っていたのだ。不眠にも悩み、この「ほづみクリニック」に入眠剤をもらいに行ったこともあった。
しゃべってる台詞が面白い。
つまり、『私の頭、ぶっ壊れてるんです』と言って登場した女子学生は、百戦錬磨の医師にも新鮮で、カウンセリングしながら、何やら才能を感じ、興味を抱かせたらしい。
(*^^)/。・:*:・゜★,。・:*:・゜☆!
というようなことを…今更ながらに再確認したわけである。
穂積先生、お忙しい合間を縫って、舞台に来てくださる由。
先生に、
シナリオライターになれ」と言ったのは正解だった。
と納得していただく舞台にしなければ…。
切に思う。