舞台裏(4)

「来週、劇場Lに行くので、三輪さんも一緒に行きましょう。予定教えてください」
ここは町田。Iプロデューサーと夕方、飲みながらの打ち合わせ。なぜ、町田なのかと言われれば、とにかく町田なのである。
仮押さえした下北沢の劇場Lは、ネット検索しただけで、私はまだ現地には行っていない。劇場を前に、具体的に色々、話し合いましょう、ということになる。
「問題は、ストレッチャー付きのベッドなんだよね」
ほうほう…本格的になってきたやんけ…( -∀-)
舞台は産婦人科の大部屋。そこに入院している3人の妊婦のお話である。よって、舞台には3台のベッドが用意され、それがまあ、唯一の大道具と言える。
このレンタル料が1台10000円かかる。1ヶ月のレンタル料だけど、日割りは不可。+運搬料。この3台のストレッチャー付きベッド。どこか医療機器メーカーから廃棄用の物でも下請け出来ないか…チラシの裏に「協賛」として名前載せるから、なんてIさんに言われ、なるほどな〜と思う。公演終われば粗大ゴミに出すけど、それでも1台10000円でレンタルするより安い!
芝居を作る、ってこういうことから始まるのね。
全く、現実的じゃないの。
( ̄  ̄) (_ _)うんうん
大道具にかかる費用、1台のベッドにかかる費用が10000円、大したことないじゃない|`Д´)ノ
という見方も出来るし、そういうプロデューサーもいるだろう。でも、私は、事情はどうあれ、大道具にかかる費用を出来るだけ節約する、というIさんの方針には、頼もしいものを感じた。大道具の費用を浮かせ、それだけ、スタッフへのギャラに割り振れば、貰う方は嬉しいだけでなく、ヤル気にもなるだろう。生きたお金になるのだ。(タダでさえ、スタッフのギャラは値切られてるはず"(-""- )")
「Kさんが絶賛してたこともあって、台本読み返してみたら…『これはすごい』と思った」
「"゚.+:。('-'*)(,_,*)('-'*)(,_,*)゚.+:。 」
「これは、イケル、イケマスよ」
「…って、今まで『イケル』と思ってなかったんですか?」
「いや…( ^ . ^ )ど(−.−)う(_ _)も」
「( 。-ω-)-ω-)-ω-) シーン・・・」
Kさんとは、今回、舞台を演出してくださることになった演出家で、その方が、台本を読んで、「ほとんどどこも、直すところがない」などと言ってくださったらしい。何を隠そう、Kさんは老舗の劇団に所属するキャリア40年〜のベテラン。Iさんの敬愛する人物なのである。
「ホントにねぇ、はっきり言って、ラストのところで涙ぐんでしまいましたもん」
「前に読まれた時とは違ってたんですか( ̄へ  ̄ 凸」
「前に読んでから大分経ってるし、めちゃくちゃ忙しくて読み返してられなかったし…。その時の状況もあるよね…」
「でも、Kさんは違いますよね」
「Kさん、頭イイから」
「(/ ̄ー ̄) (/ ̄ー ̄)ヨオッー」
何だか…よくわからないのだが、確かに、台本…脚本を読むのは難しい。無論、好みもある。再読して感想が変わった、というのもアリだろう。重要なのは、Iさんが乗ってくれたこと。「やりましょう」と声を上げてくれたこと。それに尽きる。
「実はもうひとつ、イイ事があって…。初日の前10日間、Kさんの顔で稽古場を確保出来ることになりました」
「YA〜 \(@ ̄∇ ̄@)/ YA〜」
主上演の場合、稽古場の確保というのが、結構、難儀なのである。稽古場を転々とするジプシーになりかねず、落ち着かないこと、おびただしい。
「本番前の10日、みっちり稽古場で練習出来る、って、これはイイですよ」
元役者のプロデューサーは本音を語る。
「Kさんも、ヤル気なんだなぁ」
と、どうも、Kさんのヤル気が、働きすぎ、くたびれ気味…のIさんに伝染したようである。
「台本がイイから、役者も奇をてらわずに、本当に芝居の出来る子を選びましょうよ」
どうも風向きが変わったようである。今までは、客寄せ、話題作り…のために、「集客力のある役者」というのを前提にしていたのだが…。
「最初だし、多少、赤字が出ても仕方ないんじゃないかと…」
Iさんとの話では、この妊婦話をシリーズ化する目論見(もくろみ)なのである。
私は、恐る恐る聞いた。
「赤字は…誰が背負うんですか?」
「僕と三輪さんです」
シ━━(^(^(^(^(^(^ω^;lll)━━ン