セレブなゴミ屋敷

今日は、前回のブログでちょっと触れた『グレーガーデンズ』について語ろうと思います。
というのは…これ、実話なんですね。それも…知らなきゃ損!なくらい浮世離れした、ケタ違いなお話なんです。

何と言っても、主役の母娘が、ホンマモンのセレブ!
かのケネディ大統領夫人、ジャクリーンの叔母と従姉妹、つまり、名家、名門…上流階級なわけです。
+;・ο。.・;+:+.。ο・;+*:゜・☆♪"

日本で例えるなら、三井・三菱とか、お茶やお花の家元一族とか…。天皇家と付き合いのあるようなお家柄なんですね。
正真正銘、セレブなわけです。

このグレーガーデンズというのは、1897年、ニューヨーク州ロングアイランドにある屈指の高級住宅街、イーストハンプトンに当時、別荘として建てられた屋敷。グレーのコンクリートで囲まれた美しい庭が有名だったそうです。
言わずと知れたことですが、日本の狭苦しい領土と違って、アメリカは広い。あっちの「金持ち」と日本の「金持ち」、あっちの「お屋敷」と日本の「お屋敷」はケタが違う。それこそ向こうの「お屋敷」は広大で、敷地内を車で移動。車庫でさえ(日本で言う)豪邸並みとか( ̄0 ̄;)

この、美しい庭が有名だったグレーガーデンズを更に有名にしたのが、1920年代から50年以上、この屋敷に住み続けた母娘名門、ブーヴィエ家の母と娘、イディスとイディなわけです。1930〜40年代には社交界の華」と謳われた2人、それが頑固なまでに自分のライフスタイルを貫いた結果…、
なんと…

「グレーガーデンズ」は、ゴミ屋敷と成り果て、無数のアライグマや猫に囲まれて暮らすことに


1971年、「悪臭がひどい」と近所から保健所に苦情が届き、保健所から「不衛生で人間が住める状態ではない」という「立ち退き」命令を受けます。
1972年には、ジャクリーンと妹のリーが騒ぎを鎮めるために資金を投じて屋敷を大掃除。2人は立ち退きを免れてグレイガーデンズに住み続けます。
1973年には、この長年にわたる母娘の複雑な関係をドキュメンタリー作家のメイズルス兄弟がフィルムに収め、ドキュメンタリー映画「Gray Gardens」を製作。2006年には舞台でミュージカル化トニー賞の主演女優賞、助演女優賞、衣装賞の3部門を受賞しました。2009年4月には、ドリュー・バリモアジェシカ・ラング主演でテレビ映画化されています。そして、2009年11月、シアタークリエで主演・大竹しのぶ草笛光子、演出・宮本亜門によって日本上陸…です。

舞台は二幕構成。
一幕目は娘、イディの婚約祝賀パーティの日から始まります。
婚約相手はあのケネディ大統領の兄人生最良の日です。かつて歌手だった母のイディスは、所かまわず自分の歌を披露したがる目立ちたがり屋。屋敷内に、お抱えの音楽家、グールドを住まわせているという贅沢さです。
パーティの準備が進む中、何曲も用意して、イディスはこの日も歌う気満々です。イディはそれが嫌で、今日は母に歌って欲しくないと言って口論になります。厳格な父親にもたしなめられ、思うままにならないイディスは酒に酔った勢いで、イディの婚約者に娘の過去や流した浮名の数々を暴露…。結果、婚約者は去り、イディも屋敷を出ます

一幕目では大竹しのぶが母役をやっていましたが、二幕目では娘役。母親を草笛光子が演じています。

二幕目は32年後…。
落ちぶれてゴミ屋敷と化したグレイガーデンズに、この母娘は住み続けています。ジャクリーンに頼ることも拒否し、朽ち果て異臭を放つ屋敷に52匹の猫と暮らしています。「その日暮らし」と言ってもいいほどの暮らしぶりです。
56歳になったイディは結婚もせず独り者薄くなった髪にいつもスカーフを巻き、スカートを上下逆さにはいて、「ある物で工夫した」ファッションは奇妙キテレツ!ところが、その後、このファッションが多くのファッション関係者に「新しい」と評され有名になったそう。
80歳近くなった母、イディスは体の自由も効かなくなり娘の助けなしには生活出来ません。それでも、かつてお抱えの作曲家に作らせていた歌を歌い、プライドを失わずに生活しています
落ちぶれ果てた、夢も希望もない暮らし…のはずが、2人は歌い、踊り、ショービジネスへの夢をあきらめず、罵り合いながらも奇妙に明るく生きています
娘なしには生きていけない老いた母親と、家を出て自由に羽ばたきたいと思いながら母を捨てきれない娘…。この辺は、日本でもアリガチな設定ですが、描かれる世界は真逆と言えます。
大竹しのぶが、海ぼうずみたいな格好で、マーチに合わせて歌ったり踊ったり…するんですから。

私は、ドリュー・バリモアジェシカ・ラング主演のテレビ映画版もWOWOWで見たのですが、こちらは、娘が女優の夢を求めてグレーガーデンズからニューヨークに飛び立つ経緯が描かれていました。舞台では裏に回されたところですね。
自意識過剰で奔放な母と、束縛される娘…。母娘のしがらみ。離れたいのに離れられない…
そして、

「どちらかが死ぬまで、ここから出られない」

――母娘の窮極。すさまじい…

母、イディスは1977年に他界。娘、イディは2年後に屋敷を取り壊さないことを条件に売却したそうです。
そして…恐ろしい執念でショービジネスへの夢を実現させるのです。

・:*:・゚☆d(≧∀≦)b゚+.゚イイ