「がん」という冒険(73)

★姉妹の葬儀から1週間が過ぎたが、あの葬儀は私の夢か幻想で、★姉妹は今もあのネズミの住む家にひっそりと暮らしておられるような気がしている。

聖書に書かれていることを「記事」というような言い方をするようで、書いた人(モーセやマタイ、ダビデパウロ…)を「記者」という呼び方をする。

そういう意味で、私は★姉妹のことを書き残す「記者」として主に用いられたような気がしてならない。というのも、短期間のうちにあまりにも劇的なことが起こされたからである。

確かに★姉妹は召されたのだし、記念会も予定されている。私にしか語れないこともある。そんなわけで、★姉妹のことをもう少し書き記しておこう。

 

「イエス様のなさることはレース編み」

★姉妹の言葉のなかで、最も印象深く残っている。

レース編み……複雑で繊細でムダがなく美しい。おそらく、編み上がる途上には、どこがどのようにつながるのか、計り知れないのではないだろうか?

私はまだ、イエス様を知って十年あまりでレース編みの始まりだけれど、★姉妹くらい信仰生活が長ければ、様々な模様ができあがり、その「レース編み」の見事さに溜息…なのだろうと思った。

レース編み、レース編み…。

そういえば、こんなことがあった。

9月15日は双子の娘達の誕生日で、私は娘達と江の島にいた。と、その日、いきなり★姉妹と親しい◆姉妹から携帯に電話がかかってきた。◆姉妹は★姉妹のお宅におられ、★姉妹からネズミの出現に私が驚いて、その私の驚きに★姉妹がびっくりされた、という話を聞き及び、私に電話されたのだという。ネズミ出現は9月12日のことである。

私は、娘達の誕生日で江の島でお祝いをしていることを◆姉妹に告げたのだが、

「あら、★姉妹が、『今日は🌸の誕生日よ』ですって」

🌸とは★姉妹と音信不通になっている娘さんである。詳しい事情は知らない。

私の娘達と★姉妹の娘さんの誕生日が同じだったのである。そうして、

『🌸に会いたい』って…。こんなこと言われたことなかったのに。思い出されたのね」

以来、★姉妹は「死ぬまでに🌸に会いたい」というようになったらしい。

 

そんなわけで、火災で亡くなった★姉妹が全国ネットで報道され、それを🌸さんが見るのでは?と想像した私である。どういういきさつかは知らないが、🌸さんは葬儀に来られ、待ち時間からずっと泣き通しだった。

★姉妹のご主人が海辺の貝殻で作ったネックレスがあり、それを死に装束のドレスと一緒に身に着けたいと生前、姉妹方に言われていたらしい。ドレスもネックレスも火災から守られ、それを身に着けてお棺に入る予定だったのだが、

「ネックレスは🌸が欲しがると思う」

と息子さんが言われ、お棺には入れなかった。

そして、息子さんの言った通り、貝殻のネックレスは🌸さんにとって思い出深いものであり、喜んで受け取られた。

★姉妹と娘さんとのレース編み、それは言葉では語れない物語だったのだろうが、美しく幕を閉じた。

その最後にほんの少しだけ、関わった。