「がん」という冒険(57)

「本番までに10キロ痩せなさい」

私ではない。

双子の娘のβが◆先生から厳命された。

このブログの熱心な読者(が果たしているのかどうか?)ならおわかりのはずだが、今年20歳になるα(大学1年)とβ(大学2年)は、この秋、成人式の前撮りを控えている。前撮りというのは、成人式前に振袖を着て写真撮影だけしておくのである。

本番というのはこの前撮りをさし、◆先生とはブログ初登場の7月から私が稽古に通う着付けの先生である。

この日は、高台にある先生のお宅から近場で行われる花火大会を見物する催しが開かれ、私は浴衣持参で娘達をともない、そこで先生に浴衣を着せてもらったのだが、βを見た先生の顔色が変わった。βが着る(普通サイズの)浴衣を広げ、

「サイズが無理でしょ( ;∀;)」

「……………………………………(-_-;)………………………………………………」

意味がよくわからなかった。タンスに眠っていた古い浴衣である。

「11号サイズの人が7号の服着るようなもの」

「\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?」

それでも、無理くり、着せてもらった。

何ともしまりがなく、早々に胸元からはだけ、それはもはや、

どすこい!

……………………………………(/ω\)………………………………………………

4月から寮に入ったβは、もともと太ましい上に、不摂生がたたり更に肥満した。

そうして◆先生から冒頭の厳命が下ったのである。

次に姉のαだが、こちらは太いといってもβの比ではない。普通サイズでも何とかなる。はっきりモノを言う◆先生は、

「双子でこれだけ違うんだから」

とβを叱責した。βは感情を出さない。αの次に私であるが、私はβのおよそ3分の2の体重なのである。浴衣を着るなど何十年ぶりだが、感慨にひたるどころではない。

先生宅のベランダからの花火は上々で、それを娘達と3人で浴衣で眺める。なんと贅沢なことだろう。

しかし、「どすこい!」のβを見るたび、笑っていいのか泣いていいのか、その葛藤に苦しんだ。

 

着物や帯はフリーサイズと思ってる人が多いけど、違う。

そもそも「お誂(あつら)え」というのは和服から来ている。

と◆先生から教わる。

私とαでは、私の方が少し身長が高く、体重は10キロほど軽い。(私はかなり痩せている)それでも、私からαの範囲なら、着物も帯も何とか普通サイズでごまかせるが、βの場合は「規格外」。

(-_-)/~~~ピシー!ピシー!(>_<)"(-""-)(-_-;)"(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

ことに、βが締めることになる帯は、義母の母、娘達にとって祖母が使った年代物。せっかくの記念ということで(振袖の柄に合わせて)βが締めることになったのだが、普通サイズでもβには難しい上に、昔の帯は今のものより、かなり短い。それはそうだろう。祖母と孫では、そもそも標準になる体型、サイズ自体が違う。しかし、

義母も私も何も考えていなかった。

(-_-)/~~~ピシー!ピシー!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

祖母の帯では、βは無論、αでも無理だろう、と言われる。

ではどうするか?代わりの帯を探すしかない。

また振袖の方は、染め物を習っている義母が反物から絵付けをして染めたものである。何年がかりの仕事であり、染め上げたものを大事にとってある。それだけを見れば見事なものであるが、当時の義母は、孫たちがこのように太ましく成長するとは想像していなかった。

染め上がった振袖は、畳まれたまま娘達が羽織ってみることもなかったのだが、折り畳まれたまま当日を迎えるのは、怖ろしいことである。

というようなことを、直接年老いた義母に言うのもはばかられ(ショックが大きすぎる)、様子を見ながら小出しにすることにした。

まずは、βのダイエットである。

彼女の3分の2の体重しかない私が「痩せろ」と言っても反感を買うだけなので、そっちのことはβと体型の似通った夫に任せた。

余計なことは考えるまい。

(-_-)/~~~ピシー!ピシー!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!