「がん」という鍵(3)

気が変わる、気が向く、気がつく、気が重い、気が合う、気が利く、気を引く、気を抜く、気をもむ、気が楽、気が乗らない、気が変、気落ちする、気まま、気が早い、気が長い、気を使う、気が晴れる、気後れする、気合、気力、気位、やる気、気の迷い……

ふと、これほど人を振り回す「気」とは何だろう、と夏頃からよく思うようになった。目には見えないし、ただの「気分」といえば説得力はないが、気分が人を支配することは少なくない。最高のシチュエーションで食事をしていても、気分が悪ければ台無しだし、その逆もある。どんなに必要に迫られても、「気」が向かなければ何ともならないし、どんな困難なことでも「気」が乗れば、着々と実行できることも間々ある。

「気」を「持つ」=「気持ち」は大切なのだと感じる。気持ちよく過ごしたい、気持ちよく生きたい。がんのことで病院に行く前、やたらに服装で迷うのは、この「気」のせいではないか、と思うようになった。「勝負服」といわれるが、色・柄・素材・価格・愛着…どんな服を身に着けているかで、「気」の持ちようは変わる。

そんなわけで、この日も何を着るか迷った挙句、乳がんの転移やステージがわかるCTとMRIの検査を受けに行った。

私ががんに対して、悲観的になっていないのには、選んだ病院がすぐ近所で、中に入ったことはなくてもいつも遠くから看板を見ていたり、歴史のある大病院であること、実際に中に入って、職員の感じや院内の空気が清潔で安心感をもてたこと、待合室の日当たりの良さや、担当の女医先生に最初から好感がもてたこと…が大きい。

胸のしこりに気づいてからずっと、主に祈り続けてはいたが、これらがなければ、ここまで平安ではいられなかっただろう。逆にいえば、

主が私のために、これらのことをそろえてくださった。

例えば、今回私が通院することになった「婦人外科・乳腺外科」は、病院の大きな建物の玄関脇にあった(地上3階)。絶望的に方向音痴な私だが、これでは大病院の中でも、迷いようもない。

そして、初診の日から天候に恵まれ、このCTとMRI検査の日も、晴れ渡っていた。