転倒(2)

夜、寒空の下、両手に荷物持ちながら手の甲で滲み出す血を拭いた。
鼻の下と左手の掌、右手の甲も痛い。足もすりむいたらしい。
痛み以上に、戸惑いと不安…30分のジョギングが一年も続くとは思っていなかった。主の導きと祝福なのだと思っていた。
なのに…
という戸惑い。
顔の真ん中に傷や痣が残ったらという不安。
そんなことになったら、
もう走らなくなるのでは…
主を恨んでしまうのではないか…もう…何がなんだかわからない。
仕事場に帰り鏡を見た。鼻の下が見事にすりむいて、
子どもなら愛嬌もあるが…
明日(水曜)、R皮膚科に行こうと思う。
翌日は朝から慌ただしく、午後一で約束もありマスクをして人に会った。
帰宅して、R皮膚科は8時までやってるはずだから…
と思って夕方5時に診察券見たら、
水曜の診察はは5時で終わり。
どうしようもない。
ああ…行く必要ないんですね、イエス様。
そして、また、走ったのである。
とはいえ、夫から電話があったので話のついでに、「ジョギングして鼻の下をすりむいたのだけど…皮膚科行っても笑われるだけかな?」
相談したところ、
「それ、皮膚科じゃないよ。外科だよ」
「\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?」
それだけでは終わらなかった。「鼻の下をすりむいた」など、それこそ、「鼻で笑われる」のを期待していたのだが、「そこは『人中(じんちゅう)』と言って急所なんだよ。ボクシングの一撃で死んだりするんだよ」

そうして、「病院行かないどころの騒ぎじゃない」と…
私を心配してるのではなく、脅しているのではないかと思った。
そして、恐いもの見たさに、私の仕事場に来たのである。
私の顔を見た夫は、呆気にとられた。
傷口見た中学生の娘は、驚きつつも、「放っとけば治るでしょ?」
私も、そんな感じだったのが、「鼻の軟骨折れてるかもしれないぞ」
「…だって、折れてたら痛いでしょ?」
「痛くないんだよ。その腫れ具合は…ただ事じゃないぞ」
腫れてますか…?「火曜に転倒して…すぐにでも病院だろ」
水曜が終わって、明日は木曜。病院は大抵、休診である。
心配…してるようには…どうも…思えない。
転倒した私の迂闊さ、「皮膚科」に行こうとした無知、ただちに診察受けなかった愚鈍…を責められてるような…
その上にまだ、これでもか…と傷口に塩を揉み込む。
「(近所で)明日(木曜)診療してるとこ探して、そこじゃ対応出来なくて、別の病院で手術ってことも考えないと」
「(絶句)」
そうして翌朝、朝一で木曜営業の整形外科を受信したのである。マスクして…マスク外して、傷口見た医師は言った。
「傷は浅い」
手術どころか、塗り薬さえ処方されなかった。
感謝。
…あれから一週間が過ぎ…瘡蓋(かさぶた)も外れ、傷跡も残っていない。
思えば、
両手に荷物を持ちながら走っていた私は、どこか、
面白がっていた。
ふざけていた。
ジョギングが主から受けた「恵み」なら、もっと真摯に、感謝して受け取るべきであった。
それからの私は、勿論、買い物などせず、
走るフォームを意識しながら走っている。
思えば3年前のちょうど今頃、似たようなことがあった。
http://d.hatena.ne.jp/rennren/20150128#1422430971