控室(2)

不思議である。
受験日の保護者控室、顔見知りならまだしも、名前も顔も知らない。
そんな母親2人が、自然な流れで会話し始めたのである。というより…彼女が別室受験する息子のことをつらつらと語り始めた。なんと、試験直前の連休(2月12日)いきなり高熱を出したと言う。

慌てて病院に行ったところ、インフルエンザではなかったらしい。熱は下がらず、学校とも相談して薬で熱を下げ、別室受験の運びとなったらしい。今、インフルエンザが猛威を振るい、その場合も大抵、薬で熱を下げて別室受験するらしい。
全く、受験戦争である。
受験戦争も大詰めで、受験生は心身ともに消耗している。
勉強以上に体調管理が大事になってくる。うちの娘は、神経性の下痢で「トイレ〜!」と言ってトイレに15分、20分…40分…。
お陰で正露丸事件」である。
インフルエンザは予防接種しただけで特に対策もしなかったが、こうして無事に受験出来ただけでもありがたいのだと思う。
また、私達が此処(受験校)を第一志望にしたのは去年の秋も深まった頃、従って、
学校説明会や文化祭にも行っていない。
ところが彼女のところは、中一から此処を目指して塾通いだったと言う。
はぁ〜。
ずっと頑張って来て、直前に高熱が出る
これって何だろう?この世的には「運が悪い」で片づけられるのだろうが…。この学校が本当に好きで、二人三脚で頑張って来たのに…と。こうして穏やかにしゃべりながら、内心はどんな心境だろう…と思う。「もう、祈るしかない」
と言われた。
「祈るしかない」…私は神の声を聞いたような気がした。
そうだろう、もう、神にすがるしかない。彼女は関西訛りがあり、聞くと、私と同じ大阪出身だった。それも親近感が沸いた。
私は、言った。
「私はクリスチャンなんですけど、祈らせてください」
息子さんの名前を聞き、彼の努力が無駄にならぬよう、無事に試験を終えられるよう、祈った。彼女はハンカチで目元を拭った。
神のなさることは、不思議だ。