控室(1)

受験当日。
食堂が保護者控室になっていた。
無事に娘を試験会場(受験校)に送り届け、娘は受験生の行列に並び誘導されてエレベーターに乗った。
いくらスットコドッコイの娘でも、ここまで来れば試験を受けられるだろう。
勿論、受験票は何度も確認した。(私が)
スットコドッコイは親の遺伝だとも思うが、それでも、私のスットコドッコイを彼女は遥かに凌駕している。
受験生活という、ある種、極限状態の中で、それがいつにも増して発揮されたのかもしれない。
出願時の「正露丸」エピソードは前回、書いたが、もっと凄い「正露丸」エピソードがある。出願後の1月31日、娘担任(男子)から午後、電話があった。
「あの、Mさんが正露丸臭くて、もう、教室内どころか廊下まで正露丸の臭いがして…」
担任も、聞いてる私も、笑ってる場合ではないのに、笑いを噛み殺す。
出願時、ポケットの正露丸の蓋が開いていて恥をかいたはずが、全く、凝りていなかったらしい。
「他の学年にまで伝わってるようです」
正露丸…恐るべし。
否…怖ろしいのは、我が娘Mである。時も時、この中学の受験期間が翌日、2月1日から4日まで。
試験場が正露丸臭い。
\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?
職員会議の議題にあがったかもしれない。結局、娘の制服にしみ込んだ正露丸臭を抜くために、制服をドライクリーニングに出せ。
というのである。
無理もない。
受験期間ではあっても、関係のない在校生は登校する。ただ、2月1日の初日、在校生は「自宅学習」で休み。
今日、制服を速攻でクリーニングに出し、明日引き取り、明後日、正露丸臭くなくなった制服で、娘は登校することになった。
雨か雪が降っていた。
一日で引き取れるクリーニング屋を求めて、自転車で濡れながらさ迷った、あの情けない思い…。本題から大分、それた。
ただ、このような、
想定しようもないアクシデントを何度も経験(させられた)すると、
私も相当、おかしくなっていたと思う。(目覚まし3個など)

で、私は試験場に向かう娘を手を振って見送り、「保護者控室」に向かう。試験が終わるまで、ここで待機しているのである。道中、バスを降りてからも、
保護者同伴で受験する学生はおらず、さすがの娘も、
もう、帰っていいよ。
娘の気持ち(それが正常だろう)もわかるので、
「先生に話があるから」
と言って、離れて歩いた。
毒を食らわば皿までも。(ちょっと違う)
待機中に読む本などは用意してあった。と…控室の食堂に、一人、母親らしい人がいた。
目が合って「こんにちは」と挨拶した。
「別室受験ですか?」
聞かれ、「いいえ」と答える。彼女の息子は別室で受験らしい。

       つづく