「悲愁」(2)

回想終わり、ファーストシーンの葬儀場。
葬儀を仕切るソブリアンスキー伯爵夫人。彼女が
「あなたのせいで彼女は列車に飛び込んだ」

とゲトワイラーに言えば、彼も
「自殺に追い込んだのはあなた達だ」
やり合う2人。
「あなたは目も見えない馬鹿者よ」
と夫人。ついに、
「棺の女はフェドーラではない」
と明かす。
信じられないゲトワイラーに、手を見るように言い放つ。ゲトワイラーが死体から白い手袋をはずすと…。
「67の女の手?」
老いた手を隠すために肌身離さなかった白手袋は、実は若さを隠すための手段だった
種明かしする。
「本物の彼女はどうなった?」
夫人はゲトワイラーをまっすぐに見て、顔にかかっていた黒いレースのベールをまくり、「…こうなったのよ」
「………………」

写真右は、フェドーラ演じたマルト・ケラー
20年間、バンドー医師の病院に通っていたフェドーラ(現ソブリアンスキー伯爵夫人)。
彼女が求めていたのは老化を止めるだけでなく若返ることだった。それが、初めての試みとして新しい成分を注射したところ…
(どんな顔になったかは見せない)鏡を見た彼女は絶叫。
脳にも影響をもたらして脳卒中で15年間車椅子…。
衝撃の告白をしたソブリアンスキー夫人だが、ゲトワイラーは納得できない。
「似すぎている」
死体がフェドーラでないとしても、フェドーラに似すぎている、と言うのだ。
これに夫人が答える。
「簡単だったわ。私の娘なの」
ソブリアンスキー伯爵とは船の中で知り合った。
愛し合い、伯爵から結婚を望まれるも受け入れない。女優など妻にするものではない、というのだ。フェドーラは女の子を産み、娘、アントンとは仲違いから十年間会っていなかった。フェドーラが美容施術の失敗で失意に落ち込んだことで、母娘が再会を来した。
ソブリアンスキー伯爵の別荘に身を寄せたフェドーラだが、別荘には鏡が63枚あった。
鏡を次々破壊する。
学校を中退、仕事も男も転々としてボロアパートに住んでいた娘、アントンだが、母親の窮状を知らされ、別荘を訪れる。フェドーラにとって、若い娘、アントンは、娘が自分に見えた。
娘が自分の鑑。
世間では、フェドーラは人気絶頂に引退した。
ということになっていた。
母と娘の再会。
フェドーラは人気絶頂で引退。

…平和に収まっていたところへ、波紋がひとつ。
ハリウッドから電報。
アカデミー委員会からフェドーラに特別賞を送りたい。
心から感謝して受け取る、と答えると、委員長(ヘンリー・フォンダ)が自ら、特別賞を手渡したい。フェドーラの別荘を訪れると…。
これに対して、フェドーラは、午後遅く…の時間指定して、委員長の訪問を受け入れる。娘、アントンをフェドーラになりすませ…。