「デッドマン・ウォ−キング」(2)

独房の中で死を待つ日々のマシュー。
マシューに面会するへレンは刑務所も死刑囚も初めて。
面会前、へレンは教誨師(神父)に会い、なぜ、マシューを助けに来たのか問われる。

「興味に駆られて?憐み?」
ヘレンは答える。
「彼が私に来てくれと」
それ以上でもそれ以下でもない。
神に仕える者として正しい答えだろう。
ヘレンは「尼僧の精神に合った服装」を心がけ、修道服は着ない。
「マシュー、来たわよ」
マシューの目に笑いかけるヘレン。

初対面の死刑囚に、なかなか出来ない挨拶である。
「話したいことを伺いに来たわ」
私情はない。神の使いとしての「使命」があるだけだろう。
「信用しよう」
18と19の若いカップルを襲い、女性をレイプした挙句、2人を惨殺した2人組。
「俺は何もやってない。殺(や)ったのはカールだ」
酒とクスリでぶっ飛んでいたが、
「殺してない」「神に誓う」
看守が「次は(死刑)誰か」賭けていて、自分の名前も挙がっている。
などと同情を買おうとし、幼い娘の写真を見せる。
今、死刑から免れる道は「上訴の申請書」「特赦審査会」しかなく、「弁護士が見つかれば上訴審に持ち込める」
自分の犯した犯罪については反省も後悔もなく、
自分が助かる以外のことは考えないのである。
そんなマシューがヘレンに助けを求めている。
助ける価値があるのか?
というより、

こんな奴、生かしててどうすんねん。
火あぶりにでもしてやれ。
みたいな男である。
そんな死刑囚に対してヘレンは何と答えたかというと、
「(マシューの)信頼に応える努力をする」
修道女の書いたノンフィクションだから、実際、このようだったのだろう。
作者は死刑廃止論者だったそうだが、それにしてもすごい。
極悪非道、残忍無比、一点の情けもない犯罪者を助ける努力をするのである。
ヘレンは弁護士を探し、ヒルトン弁護士をマシューに紹介する。
ヘレンの説得でマシューの母親が特赦審査会で証言。
続いて、
「死刑囚に金持ちはいない」
ヒルトン弁護士が、マシューが金持ちであれば有力な弁護士を雇い…今日、こうして特赦の嘆願などしていなかった。
そして「死刑」という「殺人」に疑問を投げかける。
一方、被害者側弁護士は、
少年の後頭部を2発撃ち、少女をレイプした挙句17回刺し、後頭部を2発。

マシューの犯した罪を確認し、それぞれの両親が受けた苦しみについて語る。
その罪の償いは死刑以外にない。
判決を待つ間に、ヘレンは被害者の少年の父親に、
「私もカトリックだ」
声を掛けられ、
「我々側の話も聞かず、よくあんな奴の隣に座っていられるな?あいつの心配に忙しくて我々を助ける気はないのか」
もっともな言い分。
「あなたの前では猫をかぶってるが、あいつは悪のかたまり」
「たった一人の息子を私から奪い取った奴だ」
私もクリスチャンの端くれ。
「死刑」は「殺人」
人間が人間を裁いた挙句、「殺人」を犯すことを神が喜ばれるはずがない、とは思う。
しかし、
この十代の男女が味わった恐怖と苦しみ。
被害者の両親が味わった、終わりのない地獄。
それは、加害者の「死刑」で癒されるものではないけれど、せめて、「死刑」くらい行わなければ…
どうにもならんやろ。
被害者の父に詰め寄られたヘレン、
「お気持ちはわかります」「お力になれることがあれば…」

と電話番号を教えようとして、
「あなたは傲慢な人だ」
被害者の父は立ち去る。
そして、
特赦は却下。
マシューの死刑執行は一週間後。
ヘレンは恵まれた家庭に育ったらしい。
実家で食卓を囲みながら、
「なぜ救いのない殺人犯を?」
と尋ねられ、
「『捕まってしまった』という感じ」
と答えている。
「あなたのハートは大きい。それを利用されないように」
と母の言葉。
特赦審査会後、ヘレンは2人の被害者の両親を訪ねる。