桂千穂氏と「サイモン・バーチ」を見る(2)

1998年アメリカ映画である。
イントロ始まって、
「(映画館で)観てらっしゃいませんか?」

聞くと、
「こんなつまらなさそうな映画、絶対に観てません」
と自信たっぷりであった。
で、映画終わり、第一声を待っていると、
「これはDVD買わなきゃ」
「…!」
最高の賛辞ではないか。
もはや、購入したDVDでさえ見る気を失っている先生に、購買意欲をかき立てたのである。
「じゃ、私もアマゾンで購入しますから、一緒に申し込みます。このDVDは借り物なので」
礼拝で回ってきたDVDなのである。
「あなた買うんだったら、貸してください。ここに来る人にコピーしてもらいますから」
ちょっとずっこける。
「あーよかった。よく溜め息ついていらしたので、退屈かと心配しました」
「この頃は面白くても溜め息つくんです」
そして、
「こんな映画、見たことないもの」
86歳、最近、さすがに「試写会も面倒になって」と言われるが、映画青年がそのまま老齢を迎えたような先生は、最近まで足しげく、試写会に足を運ばれていた。

「行かなくなると招待状も来なくなるからね」
今、カルトムービーの本を出されているが、世評などおかまいなし、エロでもグロでも片っ端から観てきた先生。そんな先生の「こんな映画、見たことない」の台詞は、そうそう出てくるものではない。
「あんな、奇形の男の子がヒーローになって映画が成り立ってるんだから」
「そうなんですよ。この映画『障害』に類する言葉が全く出てこないんです。代わりに『奇跡』って遣われてるんですよ」
「僕も(『奇形』は)わざと遣ったんだけどね。すごいですよ」
映画では病名出てこないが「モルキオ症候群」と言うらしく、「小人症」と言えばわかりやすい。
映画や舞台でも、たまに出てくる。
でも、決まって不気味、グロテスクなインパクト狙い。

サイモンのような、明るく爽やかなキャラクターは、ありえなかった。
乙武君もまっさお」
「そう」
と意気投合する。嬉しい。
この少年がオーディションで選ばれ、この映画だけにしか出演していないらしいことで、また盛り上がる。
「この演技、うまいとか凄い、とか以上に、神がかってますよね?」
「神がかってます」
「この映画のために、神に選ばれたみたいな」
「そうですね」
先生、やけに素直である。
「サイモンが、『自分がこんなふうに生まれたのは神様の計画だ』っていうのがテーマになってるんですけど、両親は礼拝にも行かないし、サイモンに絶望してて…。一体、どうやってサイモンが神を信じるようになったのか、全く触れてないんですけど…」
疑問をぶつけると、
「だからいいんです。日本映画だと説明しちゃうけど」
「奇跡の少年」だからいいのかも。
「こういう少年が『神様』って言うと、説得力ありますよね?」

「そうです」
想像以上の反応に満足して帰宅した。
サイモン演じたイアン・マイケル・スミスについて調べた。
1987年生まれだから、映画公開当時10〜11歳である。
で、他の作品に登場したデータはなく、2005年にマサチューセッツ工科大学に入ったとか。
ますます乙武君(早稲田政経学部)もまっさおである。
5月5日生まれだから現在28歳。

全く、障害者ではなく、奇跡の人である。
アマゾンで「サイモン・バーチ」2枚購入した。
一人でも多くの人に見ていただきたい映画です。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81-DVD-%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%BC%E3%83%AD/dp/B0000646PB
桂千穂の本なら
http://www.amazon.co.jp/s/?ie=UTF8&keywords=%E6%A1%82%E5%8D%83%E7%A9%82&tag=googhydr-22&index=stripbooks&jp-ad-ap=0&hvadid=65238169755&hvpos=1t1&hvexid=&hvnetw=g&hvrand=2153963121855157852&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=b&hvdev=c&ref=pd_sl_7eljv2aq62_b