「サイモン・バーチ」(1)

原作は「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」などで知られるジョン・アービングの「オーエンのために祈りを」。
1998年、アメリカ映画です。

「あの奇妙な声の少年を私は生涯忘れない」
映画はジム・キャリーのモノローグから始まります。
「それは彼の声でも、その小さな体のせいでもなく、彼が私の母の死を招いたからでもない」
とネタバレしてます。
彼によって神を知った。
サイモンバーチが信仰を教えてくれた。
私は信じる心を知った。
ジムは墓碑の前に立っていて、
「SIMON BIRCH 1952−1964」
とあり、サイモンは12歳で死んでしまったこと、サイモンとの過去を回想する映画なんだということがわかります。
大人になったジョー、ジム・キャリーは映画の始めと終わりにしか出てきません。
サイモンは、母親が分娩台でくしゃみをして生まれるほど小さく、医者から「一晩もたない」と言われます。
五体不満足」で生まれた乙武君を見たお母さんの第一声が
「可愛い!」
で、これが乙武君の人生を決めた、そうですが、サイモン君の両親は「息子に失望」して、
息子を無視することにした
そうなんですね。(この辺はあっさり処理されています)
「障害」という言葉は全く出てきません。
「障害」の代わりに「奇跡」という言葉が遣われます。
「一晩もたない」と言われた赤ん坊が、数カ月、数年…を生きて、医者は「まさに奇跡」と…。
確かに、「奇跡」だけれど、12歳になったサイモンは、甲高い声で親友のジョー(ジョセフ・マッゼロ)の腰くらいの身長しかありません。
その上、両親にまで「無視」されるなんて…。
なんて映画や!!!
と思ったら、このサイモン君、あの乙武君並みに活動的で明るい。
健康的な普通の男の子なんです。
自分を「奇跡」なんだから、と言います。

なんかすごい。
ジョーの自転車のサイドカーに乗って、野山を走り川で潜水したり、野球をしたり。
乙武君もバスケット部でしたから、負けてません。
否、乙武君はお母さんだけでなく、お父さんも素晴らしい人だったようで(「徹子の部屋」で語っていた)それからすると、

サイモン君の勝ち!!!(笑)
映画では病名まで触れていないのですが、サイモンはモルキオ症候群という病気で、身体だけでなく心臓まで小さいそうです。
野球の試合でも、バッターボックスに立ったサイモンに監督は「バットを振るな」と言うんですね。
身長が極端に低いので、ピッチャーがストライクゾーンを調節できずにフォアボールになるからです。
普通ならコンプレックスの塊になるはずが、なぜか「野球は大好き」。
ジョーの母親は高校3年でジョーを産み、ジョーは父親を知りません。
「君のママのおっぱいは町一番だ」「セクシーだ、母親とは思えない」
とか、二人で冷たい川に潜って、ジョーが、
「タマが縮んでビー玉だ」
と言えば、サイモンは
「僕のは散弾銃の弾(たま)だ」
と答える。ボートで川下りする女の子、マージョリーの胸を見て、
「お金払えばさわらせてくれるかな」
全く、爽やかな青春映画のようです。
マージョリーはサイモンを「可愛い」と言って、それをジョーが言うと、本当は自分よりジョーの方が好きだよ、と言うのですね。
ジョーが理由を聞くと、
「君が僕ならわかるよ」

ぐっと来る台詞です。
このサイモンを演じる少年が素晴らしい。
イアン・マイケル・スミスは実際にモルキオ症候群の少年の中から選ばれたそうです。
「神様が僕を英雄にすればすべてが変わる」
とサイモンは言います。
サイモンは自分が「英雄」になれる、と思っているのですね。
サイモンの勘違いを案じたジョーが、
「証拠もないのに」
すると、
「証拠なんていらない。信仰があるから」
このサイモンの逞しさ、揺るぎなさ…は神を信じる信仰によるのだとわかります。