シャネルを着る(2)

(前回のあらすじ)
娘達の小学校卒業式を翌週に控えた三輪は、スーツを新調するべく7万円を手に高島屋へ。高級ブランドフロアをひやかしがてら歩いていると、かのChanelブティックに行き当たる。そういえば、『シャネルスーツ』というものが、あったことを思い出した三輪は、今、この時を逃したら、シャネルスーツを着ないまま一生を終るのだな、という思いから、ブティックに足を踏み入れ、試着してみたのであった。
はい、それで、ウインドーに飾ってあった100万のスーツを試着してみたのですね。
試着室から出て余裕で鏡の前に立てるのは、年の功かもしれません。
「こちらの方がお似合いですね」
私もそう思った。パンプス履けば170センチ近い身長になるし、元々太る体質ではない上に、最近は食欲もなく50キロの体重である。どんなご仁が100万のシャネルスーツを試着するのか知るべくもないが、「(無理して)シャネルスーツ着てます」という具合にはなっていない。(多分)

店員は、このスーツの載ってるショーのカタログ見せたり、
「ジャケットとスカート、それぞれ普段にもご使用いただけますしね」
確かに、ジーパンの上に羽織れそうなジャケットではあるし、さりげないけれど、上等っぽい。
こんなの普段にさらりと着て、脱いだはずみに襟元のロゴ(タグ)が見えて、
「あ、シャネルだ…」

みたいなことになったら恰好いい…!
などと妄想する。
これを機に、ちょっといいモノを身に付けるようにしたら…。
そろそろ「大人のお洒落」を自覚してみたら…。
「一生モノですから。つけるアクセサリーで60代、70代…」
考える。
とりあえず、来週の小学校卒業式、来月の中学校入学式、中学卒業から高校入学、卒業、大学…
(全部、これかよ)
その間には、結婚式だの、フォーマルなお祝いもひとつやふたつはあろう。
このスーツの中に、そんな思い出も一緒に閉じ込められたら…。
高い買い物ではない。
私は車も乗らないし…
お金も遣う時には遣わないと…
などと、耳元で
悪魔(サタン)がささやく。

悪魔などと言うと、全く現実味を削がれるが、聖書には度々「サタン」が登場する。元々は神の使い(天使)だったのが、傲慢にも我が身の力を過信して、自分が神になろうとしたため、堕天使となって地獄の長となる。
個人的には、まだ「サタン」なるものをリアルなものとして認識し難いのだが、周囲の(ベテラン)信者は、盛んに「サタン、サタン」と口にされる。
神も実在なら、悪魔(サタン)も実在。
「この世はサタンが支配している(神がそれを許している)」と言われれば、それは全く同意できます。
この時、
私をシャネルブティックに踏み込ませ、シャネルスーツを試着させ、
100万のシャネルスーツを買ってもいい…
ような気にさせるのは、私ではない、サタンの仕業なのだと、妙に納得出来ました。
65万のジャケットが、「上等そう」に見えるの、当たり前やろ。見えなかったら問題やで。
魔が差した。
と、世で言われること、それは、サタンの仕業かもしれない。
妙に納得出来ました。
この日は、
「ちょっと考えさせてください」
と言って、このまま帰るのも気が引けて、
シャネルっぽくない、布地の靴を買いました。
それでも…持参した70000円では足りず、カード…。

ちなみに、高島屋カードで買ってもポイントつかないとのこと。
可愛いシャネルデビュー。
一夜明けてみると、
オートクチュールならいざ知らず(それでも高い)、吊るしのスーツで100万とは…。
(袖丈やスカート丈の直しは、初回だけは無料)
ぼったくりやろ〜!
追記


結局、「ROPE」のスーツを買いましたが、シャネルスーツの消費税でお釣りが来ました。
その上、こちらはカードを作ったら即、10%OFFになりました。