引っ越し(2)

世の中には、引っ越し好きの人がいるという。

それをいうなら、私は、引っ越し嫌いだろう。

20代の後半、アパートからマンションに引っ越すことになった。

若いし、普通なら希望にあふれて、ワクワクイソイソと引っ越し作業に励んだだろう。

しかし…私は、ウンザリだった。

荷造りしながら、もうゴメン…だと思う。

特に、古い日記や手紙、使わないのはわかっているのに、捨てられない品々…

考えるのも面倒で、まとめて段ボールに詰め込んだ。

物を買う(増やす)のは考え物だとしみじみ思った。

それから、結婚しての引っ越し

仕事場を借りる引っ越し

続・仕事場の引っ越し…

となる。

私の中では、20代後半の引っ越し感がトラウマのようにあり、今回も、

覚悟して荷造りに取り掛かった。

カセットテープの箱があった。

これはどうやら、前回の引っ越しからそのまま、開いたこともなさそうである。

見れば…大学生の頃のカセットテープがあるではないか。

自分で録音したのもあれば、もらったのもある。

なかなかに…踏ん切りのつかないものであるが、試しにSonyのCDラジカセで聴こうとしたら、エラーが出て、

聴けなかった。

それで気持ちの整理もつき、ゴミに出す。

手紙……今とは違い、結構、赤裸々なやり取りもしていたのである。

今から思えば「恋文」のようなものもある。

だがしかし…そのような手紙は箱に詰めてあったのが、なくなっていた。

処分したらしい…。

よかった。

日記については、私は高校生の頃から日記をつけていたから、頭が痛かった。

十代の日記など、開くのも恐ろしい…が、開いてみたら、

高2の夏、弟の定期を借りて大阪へ行くのにキセルして、まんまと見つかり…

「こんなことしたら、定期の全部、キセルしたと思われて賠償させられるねんで」

と、20万円の支払いをされると駅長室で言われたことが書かれてあった。

高校生の私はひたすら謝り、乗車した電車料金の倍額で勘弁してもらったらしい。

しかし、私の日記によれば、

「こんなことでバレるなんて。これからはバレないように注意しよう」

とあった。

そういうものかと、勉強になった。

娘たちが同じ年ごろで、自転車の駐輪代(一日80円=1カ月分2400円を渡している)を倹約して駐輪違反しているのを叱ったけれど、そんなのは可愛いものだと納得した。