「ぼんち」(2)

喜久ぼんの父親、大阪船場の足袋問屋、河内屋の4代目を演じるのが船越英二
2時間ドラマの帝王と言われる「船越英一郎」の父親ですね。
船越英一郎も俳優として悪くはないけど、
こんな父親もったら、俳優、やってられないのじゃないかしらん。
と思いました。
もう、うますぎ!すごすぎ!
妻の勢以(山田五十鈴)、姑のきの(毛利菊枝)――この強烈な一卵性母娘のダブルスに全く引けを取らず、一人で太刀打ち出来てます。
気の弱〜い、影の薄〜い婿役なのに。
何でも、河内屋に15で丁稚、26で養子に入ったそうで、
婿としてきののお眼鏡にかなったのでしょう。
そして、婿として見事に河内屋を盛り立てていきます。
ただ…。
男として、人間として…その人生はどのようなものだったのか…。
4代目はもう寝込んでいて、危ないんです。
危ないのに、妻も姑も、孫を連れて旅行に出ています。
4代目が遺言のように喜久ぼんに言います。
「気根のあるぼんちになってや。ぼんぼんで終わったらあかんで」
鬼の居ぬ間に…喜久ぼんは、父親が密かに付き合っていた芸者の存在を知って、父親の世話をさせます。
そして、4代目は亡くなりますが…。
おいおいと泣く妻の勢以に、きのは、
「あんな婿はんでも、やっぱり頼りにしてたんかいな」
嫉妬ですね。すごい剣幕です。そして、
「泣き止み!嫌らしい」
4代目が亡くなり、5代目を継ぐ喜久ぼんの襲名祝いが行われます。
内祝いに配る足袋には、純金のこはぜがついています。
この襲名祝いで立ち働くお福(京マチ子)を見初めるきの。
「ええ身体やし、品もあるし、わてが男やったら子ども産ましたいような女や」
(嫁はもう面倒臭いし)喜久ぼんの妾にでもしたいようなんですね。
で、次に登場するのが若尾文子演じる、芸者のぽんた。
祝いの後の座敷に現れたぽんた。
「なんぞ賑やかな話ないか?」
喜久ぼんに言われたぽんた。
背中向けて、何やらごそごそ…。
何と、両手10本の指にそれぞれ指輪をはめてるではないですか!
「賑やかだっしゃろ?まだ、おますねん」
…足の指にも指輪です。
「この5本が、わての横綱のお客さんだす」
大関、小結…とあり、迎える客によって指輪を替えるそうなんですね。
確かに…賑やかですわな。
で、ここで喜久ぼんが、かまします。
「わてが今日から、指輪一本にしたるで」
…妾として囲うということなのでしょう。
さすが、です。
で、このぽんた、
2号(妾)の本宅伺いという風習が、船場ではあったようで、
ぽんたが、勢以ときのに挨拶伺いに行くんですね。
正式な妾として、本宅に承認されるという儀式なのでしょうか。
「月のもの」がいつから始まったか、などと聞かれ、ぽんたは「12」と答えます。
「なかなかのおませ」と言われ、「ややはあきませんで」と釘打たれます。
お茶一杯、出されなかったものの、豪華な土産もらって、喜久ぼんの前でさばさばしているぽんたです。
で、きのはこんなことを言っています。
「根性のある女に女の子を産んでもらいたい。でけのええ男を婿養子にもらう」
既に離縁した本妻の長男がいますから、でけのええ婿養子をもらったら、鬼に金棒というところのようです。
あっぱれ…というしかありません。
で、その「根性のある女」として目をつけたのがお福なわけですね。
それからも、草笛光子越路吹雪…が喜久ぼんの周りを華やかに取り囲みます。
子どもを産む女、死ぬ女…戦争も始まって、色々あります。
豪華スター女優陣の入浴シーン(喜久ぼん抜き)まであって、眼福です。
喜久ぼんを演じた市川雷蔵
22歳から初老まで…舞台ならまだしも、映画で…見事でした。
1967年、37歳で亡くなり、奥様は28歳、3人の子どもがあったそうです。
痩せ衰えた死に顔は見せないように、と死に顔に二重の白布が巻かれたそうです。