「大悪党」(2)

この映画、白黒映像でストーリー展開も暗いのですが、
緑魔子のエキゾチックな美貌
が際立って、映画を華やかにしています。
この女なら、ヤバい男に目をつけられても仕方ない。
という説得力あります。
半裸の状態が多いのですが、おっぱい見せたりお尻丸出し…もなくて、それが映像に緊張感と品格を持たせていると思います。
緑魔子、演じる洋裁学校の女学生、芳子。
ヤクザの安井に目をつけられ、裸の写真を撮られて脅されて…。
客(アイドル歌手)取らされて、それを8ミリフィルムで撮影されてしまいます。
否も応もなく「俺(安井)の女」にされてしまうわけです。
安井はアイドル歌手の会社に8ミリフィルムを売りつけます。
会社は得田弁護士を頼み、この得田がとんでもない奴ですが、田宮二郎が演じます。
で、アイドル歌手との濡れ場を8ミリフィルムで撮られてしまった芳子です。
逃げようとする芳子に、
「エロフィルム、ばらまかれてもいいんだな?」
安井が脅迫します。
「結構よ。私もう、覚悟したわ。どんな目にあってもいいの。まともな結婚が出来なくても、人に何と悪口言われても平気」
だけど、
「あんたと暮らすのはイヤ。殺されたってイヤ」
素人のお嬢さんが、落ちるとこまで落ちて、覚悟決めたんですね。
安井は、
「じゃ、望み通り殺してやろう」
殴る蹴る…下着も引き裂いて、
おとなしく寝てろ。
この世の終わりです。
そこへ得田弁護士が現れ、8ミリフィルムの件で安井とやり合います。
「エロ写真で人をゆすれると思ったら大間違い」
得田弁護士演じる田宮二郎…ニヒルでシャープ、
インテリヤクザ
という感じ。
ヤクザもんの佐藤慶より年下ですが、
一枚上手(うわて)感漂います。
「これが俺の女房だ」
安井が得田に芳子を紹介します。
得田は隙を見て芳子に、
「困ることがあったら、いつでもここにいらっしゃい。ご相談にのりますよ」
甘い言葉を投げかけます。
その言葉に乗せられて、得田の事務所にバスタオル姿で逃げてきた芳子。
「奥さん、なかなか派手な格好ですね」
「タクシー代払ってください」
すがる思いで飛び込んできた芳子に、得田は言います。
「ああいう手合いにかかったら、おしまい」
そして、
「食うか食われるか、一人しか生き残れない」
芳子が生きる道は安井が死ぬこと。
つまり、安井を殺せというのですね。
ヤクザの女にされて売春させられてる芳子ですが、殺人となると、ひるみます。
そこへ、
「人を殺しても、人殺しになるとは限らない」
ヤクザの親分や政治家は刑務所に入らない。
そこへ安井が来て、芳子を連れて帰ります。
哀れ、芳子…。
得田への嫉妬も相まって、安井の怒りは炸裂します。
ファーストシーンで、ボーリング場で恋人と別れ話していた女子学生が…ここまで身を落とすとは。
でも、現実には、結構あるのでしょう。
(変な奴に)目をつけられたらおしまい。
芳子は暴力ふるわれ、無理やり犯されて…安井は寝ています。
「食うか食われるか、一人しか生き残れない」
安井の寝顔見ながら、得田弁護士の言葉が蘇ったのではないでしょうか。
同時に、
「人を殺しても、人殺しになるとは限らない」
気休めかもしれないけれど、この言葉も思い起こしたでしょう。
そして芳子は、飲めない酒を飲んで、眠る安井の首をネクタイで絞めて…殺します。
死の商人…得田に電話して…。
安井は勿論、悪党だけれど、その上を行く悪党…。
それは得田。
そして…。
その得田を最終的に唸らせ、舌を巻かせた大悪党。
それは…
どうぞ、本編でお確かめください。