「象を喰った連中」(1)

1947年ですから、戦後間もなくの映画です。
勿論、白黒。
まず、スクリーンの最初、象のアップにかぶり、
「科学と生命に関する一考察」
と出ます。
何なんだ、これ…。
次にメインタイトル、「象を喰った連中」が出て「科学と生命に関する一考察」がサブタイトルに。
象の映像をバックにクレジットが流れます。
そして、出演者まで、
「象を喰った連中」「彼らを巡る女たち」「象を喰わない連中」
というクレジット付きで紹介される。
このセンス、遊び心…この監督、タダ者じゃない。
期待させます。
戦後の食糧難を背景に、病気で死んだ象を研究者達が食べてしまい、その病原菌によって血清がなければ30時間後に死ぬ。象を喰った5人の男達の運命やいかに…!
というストーリーです。
桂千穂著「カルトムービー 日本映画1945→1980」の解説によると、これは本当にあった話で、宝塚の動物園で病気に冒された象を食べた人々がワクチンを探して大騒ぎになった、という記事を読んだ吉村公三郎監督が、脚本家にシナリオを依頼したとあります。
象を取り囲む動物園園長、白衣の研究者、棒立ちの飼育係の夫婦。
「このシロ―ちゃんを助けてやってください」
こう訴えるのは、「象を喰った連中」の一人、飼育係の山下で、笠智衆です。
40代の笠智衆、相変わらずの棒読み台詞。
何でも、このシロ―ちゃんとはシャムのプラチャックキリカンでチークを切ってた頃から一緒だったそうで、「若い時分からの親友」なのだそう。
シロ―の鼻血やしゃっくりに戸惑い、「何だろうなあ、一体…」と頼りない研究者達に、「博士は?」と聞くと、「新婚旅行」
シロ―が生死の境を彷徨っている時、老博士は異国の地で葉巻くわえながら、純白のロングドレス着た若い妻と寛いでいます。新聞か何かでシロ―の死を知るのですが、この辺の妻とのやりとりも、何ともほのぼのとして、ユーモアが散りばめられます。外国映画みたい。
「シロ―ちゃんみたいに、ぽっくり死んじゃ嫌ですわよ」
みたいな。
シロ―の死によって、死因の病原菌の話を博士がします。人に感染したら云々などと。すると、天然の若妻、
「食べちゃいけないでしょうね」
「象を喰う奴はいるまい」
と博士。
次のシーンでは、
フライパンに美味そうなステーキが焼けています。
お見事!!!
丁寧にやりたいので、続きはまた。