『悪役志願』(1)

舞台は娼館。
上下に四つのベッド、階段。夜の遊園地を思わせる派手でデコラティブな舞台美術。レトロ調で毒の匂い。これから何が起きるのか期待感がわく。隣で観ていたIプロデューサー、
「金かかってるよね」
確かに。
さて、そこにやって来たのはヘンゼルとグレーテルみたいな兄妹。両親がキャデラックに轢き殺され、その復讐にここまで来たのが、カタキは既に死に、その娘が娼館の女主人を名乗っている。娼館の中では色とりどりの娼婦が蠢(うごめ)き、様々な客との虚々実々…が錯綜し、兄は悪に染まり、妹は恋に身を落としてヒロポン中毒…。幻想的な毒の世界が繰り広げられます。
日米安保、赤線廃止、戦後日本…ガッチリとした「時代」を踏まえながら、やがて迎える赤線最後の日。多彩なエッセンスを織り込みながら、物語は重層的に展開します。そして、あの、グレーテルみたいな可憐な妹が、たった一人、オカルト的なまでに堕ちて、一体、どうなるの〜と思ってたら、大ドンデン返しのハッピーエンド。ちょっとムリがあるような気もしたけど、悪くない。妹役の牛水里美と娼館で地味に働く東京ボードヴィルショーの市川勇演じる掃除夫の力技かな?

場所は高円寺にある座・高円寺1。
赤澤ムック作・演出、黒色奇譚カナリア派第12回公演『悪役志願』を観て参りました。
きっかけは、Iプロデューサーに声を掛けられたからなんですが…。
此処まで読んで、何かお気づきになった方、いらっしゃいませんか?(いたとしたら偉い!!!表彰状を贈りたい(o^∇^o)ノ )
赤澤ムック…。
そう、私が感動して二度まで観に行った映画、『結び目』で、その演技にぶっ飛んだ主演女優ではありませんか。
7・5のブログを見たIさんが、「赤澤ムックと飲みましたよ〜」と連絡をくださり、その流れで今回の観劇となりました。Iさんが制作協力した舞台に黒色奇譚カナリア派の芝原弘が出ていて、その挨拶に赤澤ムックが来た、というわけなんですね。ホント、業界って狭いです。
ただ、私の心情としては複雑です。
私の中で「赤澤ムック」「赤澤ムック」でなく、『結び目』のヒロイン、絢子(あやこ)なんですね。役者がよく言うじゃありませんか。主演してるドラマなんかが当たると、世間からは、そのキャラクターのように見られる、って。善人なら善人、悪人なら悪人で石投げられたり怒鳴られたりするわけですね。その理論のように、私にとって「赤澤ムック」は「絢子」なわけで、ドスの効いた目でタンカ切るのが何より似合う、色んなことがバカバカしくてアホみたいで、でも、仕方ないから「現実」に帳尻合わせてる「嘘つき女」の絢子なんですね。SMの女王みたいなものです。
なので…。
『悪役志願』も冷静に見られなかったと思います。ごめんなさい。でも、登場人物入り乱れる前半から次第に集約されてくる後半に来る辺り、「絢子」が演出してるような感じが何だかしたんですよね。
で…。
終演後、赤澤ムックがゲストを迎えてのアフタートークあり。
生赤澤ムック見るの、緊張しました。
短い黒髪にスラ〜と背が高くて少年みたいな感じ。
絢子じゃない!
YAH♪☆0(^^0)*^^*(0^^)0☆♪YAH
当然ですが。
客席にガン飛ばすはずないやろ∩(+`ω´+)∩・・・キュゥ
ちなみに、関西弁では「メンチ切る」と言います。
尖った感じは何処にもなくて、自然体な感じでした。
で…。
一緒に来たIプロデューサー、赤澤ムックの事務所社長兼マネジャーと十年からの付き合いとかで、開演前にご挨拶させていただいたんですね。ほんま、業界狭すぎるで。
で、帰り、赤澤ムックを紹介してもらえそうな気配で、ロビーでIさんとしばし待っていたのです。
すると…。