魔物に取り憑かれる。
俳優、三國連太郎は舞台の台本は600回、映画でも200回読むそうです。その理由として、
「キザな言い方をしますと、作者の菌に冒されなくちゃいかんということですかね。頭だけの感染じゃなくて、五体すべてに感染していかないと、やっぱり違うんじゃないかな」
これを読んで、これかぁ〜と思い当たることがありました。亡くなった緒形拳が「役作り」について聞かれた時に、
「憑依(ひょうい)する」
と答えたそうです。憑依、つまり「のり移る」わけですね。
作者の菌が五体すべてに感染する=憑依
ということではないでしょうか。見た目は三國連太郎でも、中身は役柄と入れ替わって別人格なんですね。考えると怖い。
ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した寺島しのぶも、受賞作「キャタピラー」の台本を受け取った時、
「体中に電流が走った。これをやらないと絶対にいけないと思った」
そうです。
この映画で寺島しのぶは、戦争によって、顔はやけただれ、四肢を失って帰還した兵士の妻を演じます。無残な姿になっても衰えることのない食欲、性欲…。そんな夫に尽くす妻…。かなり大胆な濡れ場もあるようです。
寺島しのぶと言えば、言わずと知れた梨園の家柄。父親は歌舞伎俳優、尾上菊五郎、母親は女優、富司純子、弟は尾上菊之助。映画初主演作「赤目四十八滝心中未遂」で、刺青を背負った全裸シーンを演じました。脱ぐ脱がないで富司純子と「死ぬ」の「生きる」の…壮絶なバトルがあったようです。
「キャタピラー」の原作は江戸川乱歩の「芋虫(いもむし)」。受け取った台本、おそらくは壮絶な内容のものでしょう。その瞬間、
三國の言う「作者の菌」が寺島しのぶに感染したのでは…。好きとか嫌いではなく、やりたい、やりたくない…の次元でもない。
「これをやらないと絶対にいけないと思った」――逃れようのない女優の業(ごう)
を感じます。
三國連太郎と言えば、映画で老人役(当時34歳)の役作りに上下の歯を10本抜いたというエピソードもあります。
結婚4度もして、佐藤浩市は3度目の妻の長男なんですね。
俳優の「俳」は「人」に「非(あら)ず」。「優」は「人」が「憂(うれ)う」と書きますね。
女優については、誰だったか、面白いことを言っていました。
「男・女・女優」というくらい、「女優」は別物だと…
舞台を観るようになって、私の「役者」(俳優+女優)に対する感じ方も変わりました。
それは、表舞台に立つ華やかな仕事というより…
悪魔に魂(たましい)を売り渡した職業
ではないか…。
魔物に取り憑かれないとやれない
のではないか…。
何やら、物騒な気配になって参りました。
ところで、三國連太郎の他にも、台本を500回、1000回読む…という名優話はよく聞くのですが
誰が数えてるんですか…?
三國連太郎が正の字書いて数えてるとか…?!!( ; ロ)゚ ゚
さてさて…
堅苦しい話は置いといて…。
去る26日、東宝ミュージカルアカデミー(TMA)4期生のダンス試演会というものに行って来ました。
TMAとは、ミュージカルの殿堂、帝国劇場・シアタークリエなどを所有する東宝が「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などの東宝ミュージカルで活躍出来る人材を育成している俳優養成所です。
日頃からお世話になってるルシーラ姉御の一人娘、豊城礼譲がこの4期生で駆けつけたのです。
卒業公演の「ラ・ミゼラブル」を3月に控えたこのダンス試演会は、
卒業生37名が、ミュージカルナンバー、ジャズ、バレエ、タップ…を1時間ノンストップで歌い踊る…!
というもの。
「この真冬に稽古着に塩が吹くほど頑張ってる」
そうな。
どれどれ…。
未来のミュージカルスター発掘に豊洲のダイジョースタジオに行って参りました。
駅から姉御が愛車のBMでお出迎え。
試演会は25日の2回と26日の2回。つまり、今回が千秋楽。試演会の感想については、一言、
「青春」
なるほど〜。ちなみに、愛娘、礼さんの調子を伺えば、
「絶好調!」
舞台もない小さな部屋で照明も衣装もなし。
リノリウムの床続きに客席が設けられ、それこそ、汗が飛んできそうな距離で彼らの歌い踊るのを観ることが出来ます。
それが逆にすがすがしくて、緊張感のようなものが漲(みなぎ)って、私は席があるにも関わらず、立ち見しました。
全国から集まった精鋭37人が、1年間指導、レッスンを受け、これから羽ばたいていく…
(*^^)/。・:*:・゜★,。・:*:・゜☆!
礼さんとは2年ほど前に一度会ったきり。まだ高校生でした。4歳からクラシックバレエをやっていてダンスが得意。今回もクラシックバレエリーダーとして「くるみ割り人形」スペインの踊りと、ミュージカル「ナイン」のカルラ役のソロを踊るとか…。
舞台(?)の彼女を観るのは初めてでした。
そして…ソロで踊る彼女は踊りもさることながら…
き、綺麗…。
彫りの深いハーフのような顔はエキゾチックで、「カルメン」を彷彿とさせます。そうそう、2年前に確かに見てるけど、それに磨きがかけられ、黒真珠のような神秘な輝きを放っている…。背も高くて手足も長いから、踊りも映(は)える…。
姉御のご主人、外国人じゃなかったよね…???
いえいえ…。
何を隠そう、姉御は元タカラジェンヌ(娘役)…。今も勿論、お美しいけれど、当時の倍の体型になられたとか…( ̄▽ ̄;)
ま、深く詮索するのはやめましょう。
とにかく、
豊城礼は美しかった。
姉御の「自慢の娘」なのはよくわかりました。
今、二十歳。これからどんどん、大人の女性として女優として、変化していくのが私も楽しみになりました。
そして、TMA4期生達のステージは…
息つく間もないほどの迫力…
衣装替えもない、本当にノンストップ!
黒一色の衣装が若さに映えて、躍動感を感じさせる。
迸(ほとばし)るエネルギー…
「この真冬に稽古着に塩が吹くほど頑張ってる」
というのは大袈裟でなく、連日10時間近くの稽古を重ねたとか。
それも納得。…というより、それくらいしなければ、ここまでやれないでしょ…
連日10時間…
ただ、「歌が好き」「踊りが好き」…だけではもちませんね。やはり…
魔物に取り憑かれなければ…
それは、三國連太郎が言う「作者の菌」に冒される始まりのような…。
頑張ってください!
・*:..。o○☆*゚Congratulations!!・*:..。o○☆*゚
ところで姉御…
「脱ぐ」…ことを決意したとしたら…
どうされます???