健康診断(2)

そして数日後、私は血液検査の結果を聞きに、再び来院した。
尿検査やレントゲンと違い、血液検査の結果だけは後日、と言われていたのである。
で、
血液検査…異常なし。
当然でしょ。
だって、献血でこれまで異常なかったし。
そして、血圧計出されて血圧測ると…
上が180、下が130…
前回は外部条件によるもので、自宅、平安状態で測れば大丈夫だろう。
ということだったが、
「高血圧かもしれないよ」
れれれ…!
(CMで流れる血圧)上130が「高め」なら、上180は尋常でない高さである。
「だって、前の時、レントゲン診ながら、『高血圧じゃないことがわかる』って」医師を責めるではなく、やんわりと言った。
「うん、心臓が大きくなってなかったから」高血圧によって心臓が肥大するらしい。「遺伝の高血圧だね」
健康診断ではどこも引っかからず、ノーチェックだったもので「原因不明=遺伝」ということか?
そ、そんなぁ〜!!!
「先生、私、若い頃、低血圧だったんですよ。どれだけ朝がつらかったか。上が80、下が40…とか」
「そんなこと言ったら、俺だって若い頃はもっと毛があったよ」
捨て身の説得は、説得力大である。確かに…。
「母も若い頃は低血圧で、今は高血圧だって騒いでます」
「ほら」
前は「高血圧じゃない」と言っときながら、ほらはないでしょ、と思うが…。
「高血圧は脳梗塞とか脳溢血とか色々引き起こすから、薬飲んだ方がいいよ」「父が脳梗塞になりました」
「ほらね」
「…………」
ガンも怖いが、脳梗塞で突然、半身不随などはもっと怖い。
「(父親がガンで死んだけど)俺はガンで死ぬのでいいと思うよ」と以前、この医師が言われたのだが、それから私も、ガンという死に方。もあるなぁ…と思うようになった。
十年以上前になるが、漫画家の里中満知子(子宮ガン)がテレビで「ガンはいい病気」だと言っていたのを思い出した。病の進行の具合がわかり、残された時間を把握できるということだったと思う。対処のしようがない、のと違いタチは悪くないのだろう。当時はわからなかったが、今なら、ある程度わかる。
抗がん剤などの過激な治療を受ける気はない。死期がわかるなら、生前、やっておくべきことの算段もつけやすい。
遅かれ早かれ、人間は死ぬのである。ガンを老化現象として受け入れる。…というようなことをぼんやり思うようになった昨今。
思うだけで「覚悟」など元よりないため、ガン検診の手前でためらっている。
そこへ、思ってもいなかった高血圧。「高血圧」宣告から、いきなり脳梗塞は論理の飛躍だろうが…。
何せ、健康診断というものにひっかかったことがない。(経験のないため)頭痛、腰痛、生理痛、高血圧…の話題についていけなかった。
双子妊娠で「悪阻」(つわり)=双子の場合、悪阻は通常妊娠より重い=もなかった。
夫から「青銅の魔人」と呼ばれてきた私であったが、「高血圧」にひっかかっただけで、尋常ではいられず、
周り中に不安を訴えたら、「大変じゃない」「薬のまなきゃダメよ」「大丈夫?(よく平気でいられる)」無反応は夫だけであった。で、覚悟を決めて…血圧計を入手し、測定したみた。
と…
(朝、自宅で血圧を測定した)当日、来院した私は、医師から高血圧の薬を処方された。
「俺も同じ薬飲んでるから」
飲みながら血圧低下に努めれば、薬の必要もなくなるような話も聞いたのだが、
「ここまで(高血圧)だとそれはないね。生涯飲み続けるなどと言われる。
良くも悪くも、医師の言うことも話半分。ただ、「高血圧」を与えられ、前向きに対処する心構えができた。
「健康」に対する感謝の念も逆に湧いた。
また「高血圧」ネタで随分、話が盛り上がることも知った。「高血圧」を与えられ…感謝?!