「HOUSEハウス」(2)

桂千穂著「カルトムービー日本映画 1945→1980」で、
「こんな変わった映画はどこにもないせいか、いまだに海外で売れ、印税が入ります」
こんなキャプションで紹介されている、この映画。
1977年、当時、山口百恵三浦友和のゴールデンコンビで正月と夏休みに映画が公開されてたんですね。
このゴールデンコンビの第6弾、「泥だらけの純情」と二本立てで上映されました。
この映画が誕生する大まかな経緯は前回書きました。
DVDに大林監督のインタビューも収録されていて、それによると、
「夏休み、7人の女子高生が一人ずつ家に食べられる映画」
この企画が通ってから、
「プロデューサー8割監督2割」でこの映画を宣伝しまくったそうです。
今で言うメディアミックス。
企画が通っただけなのに、コミック、ノベライゼーション、サントラ、ラジオドラマ…
なんと、少年マガジンに漫画として掲載された。

家から舌が出ていて「HOUSE」――。
すごいインパクトです。
このデザインも大林監督が考えたようで、台本の表紙や名刺にも使ったそうです。
当時、大林監督は「CM界の巨匠」「CM界の黒澤明などと呼ばれていて、
「ハリウッド映画をCMでやっていた」
映画評論家の故、淀川長治氏が、「日本映画作ってよ」と監督にラブコール送ったこともあったようです。
2年間の宣伝効果もあり、公開時には話題沸騰。池袋の映画館では、
「映画館から駅まで行列が出来た」
とか。
オシャレ、ファンタ、メロディ、クンフー、マック、スウィート、ガリ…。
女子高の仲良しグループです。
名前は一切、出てきません。
例えば、ファンタは「ファンタスティック」(幻想的)、マックは「ストマック」(胃袋=大食い)のように、キャラクターをわかりやすく判別していて、映画の世界にすんなり入り込めます。
唯一、主人公のオシャレ(池上季美子)の苗字が「木枯」と郵便ポスト表示に出てくるのみ。
これは、オシャレの父親を作家の故、笹沢佐保が演じていて、氏の代表作木枯し紋次郎にひっかけたもののようです。
映画音楽作曲家の父親とオシャレは二人暮らし。母親を8年前に亡くしています。
この夏休み、父親と軽井沢の別荘で過ごす予定だったのが…。
新しい母親(鰐淵晴子)を紹介され…。(この鰐淵晴子のシーンは、まさに『ハリウッド映画をCMでやっていた』です)
オシャレは、母の実家で夏休みを過ごそうと、一度しか会ったことのないおばちゃま(母の姉、南田洋子)に手紙を出します。
おばちゃまから快い返事を受け取り、おしゃれは仲良し6人を誘って、母の実家へ向かいます。
列車の中で男の子が見ていた絵本の列車が抜け出て、そのまま風景となったり、
オシャレが話すおばちゃまの話がそのまま古い映画になり、聞いていた女の子たちのコメントが映画を見るコメントに変わる。
ちなみに、列車の乗客の中に、若かりし頃の桂千穂氏がおられます。
こんな…普通でない、実験的とも言えるような映像のオンパレードで、映画は進行します。